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メンタルヘルス・コラム

2022年12月6日

97号 「こころの相談、AI/チャット活用へ」

本号特集「こころの相談、AI/チャット活用へ」<メンタルヘルス通信 No.97>

今号のメンタルヘルス通信は、
相談を必要とする方への、新たなこころのセーフティーネットとして期待されている、
「チャット相談」をメインに取り上げています。

チャットに慣れた若年層だけではなく、近年では働く大人たちにも利用が
ますます拡がっている現状や、弊社での取り組みなどもお伝えしております。ぜひご一読ください!

メンタルヘルス通信は、イントラネットへの掲載やプリントアウトしての配布など、
従業員の皆様へのメンタルヘルス啓発活動などにご活用ください。

【PDF版】
メンタルヘルス通信_第97号(PDF)

【テキスト版】
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NO.97 こころの相談、AI/チャット活用へ!
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<<こころの相談にもAIを>>
カウンセリングでは、現在、AIがカウンセラーの代わりをするのは難しいだろうと考えられています。
とはいうものの、すでにAIはカウンセリングの分野でも一部活用されたり、さらなる模索と研究が進んできています。

米国では、自殺防止のチャット相談において、AIが相談者の言葉から、自殺のリスク判定をしていき、そのリスク判定を元に、相談員やスーパーバイザーがどの相談に優先的に対応するかを決めて(トリアージ)います。時々刻々と流れていくチャットの言葉に即して瞬時にリスク判定も行っていくのですから、自殺の危機に対応するチャット相談には大変心強いものとなっているようです。

ここ日本においては、まだそこまでの活用には至っていませんが、確実に研究は前進していっています。
日本でもチャット相談スタートチャット相談ですが、日本で始まったのは2016年頃です。
比較的新しいツールであるチャットですので、チャットに慣れた若年層や子どもたち対象に始まっていきました。
そして、若年女性対象の相談窓口や通信制の高校など、相次いでチャット相談が始まっていきました。

東京メンタルヘルスでは、通信制高校のチャット相談からスタートし、その後、NPO東京メンタルヘルス・スクエアに全面協力し、厚労省の自殺対策SNS相談も行ってきています。

また、これまで全国各地の自治体からもSNS相談を多数受託し、実施してきました。
2016年からはじめて今年で7年目のチャット相談です。

<<働く大人たち向けのチャット相談>>

主に子ども/若年層対象からはじまったチャット相談ですが、働く大人たち向けのチャット相談の現状はどうなっているのでしょうか?
働く大人たち向けのチャット相談の実施も、確実に増えてきています。
弊社東京メンタルヘルスでは2018年より、個別のニーズに対応していく中で職場での相談にチャットを活用しています。

法政大学教授の宮川路子先生(医学博士)は産業医もされていますが、産業医の立場からSNS相談の必要性や可能性を指摘しています。

宮川先生はEAP(従業員支援プログラム)について、「電話や対面でのカウンセリングは時間的、場所的、精神的なハードルがあって利用を躊躇している人がいるという意見が寄せられている」と述べられています。

そして、「もう少し気軽な形で相談ができればいいという希望も寄せられている」そうです。
(宮川路子(2020)「メンタルヘルスケアにおけるSNS相談の効果と可能性について」人間環境論集、より引用)

<<EAP相談にもチャット相談を!!>>

そして、東京メンタルヘルスでは、来年2023年より、チャット相談を企業学校向けのサービスニューに加えます!!

チャット相談は、気軽に相談できるところが良さであり、こころの相談の入口の一つとしてはとても適していると考えています。実際、当社が取り組んできた中で、これまで相談を利用してこなかった多数の方々が、チャット相談を利用してきているのを目にしています。

ただし、チャット相談実施にあたっては注意点もあります。
気軽に相談できるのがチャット相談の良さですが、相談を受けるカウンセラーも簡単に相談を受けられるかというと、実は容易ではありません。
チャットは、デジタル文字を使うコミュニケーションであるため、複雑なこころのやりとりをすることの難しさもまたあるためです。
対面や電話での相談と同じようにはいかないところもあり、カウンセラーのトレーニングも必須です。
東京メンタルヘルスでは、カウンセラー登用に厳しい基準を設け、必要な専門技能の研修も行った上で、チャット相談を担当しています。

これまでの相談実績のもとに、働く人々向けにチャット相談サービスを新たにスタートします。
新たなチャット相談のスタートにより、相談したくても、なかなかすぐには相談とはいかなかった方たちも含めて、相談が必要な方たちに、こころのセーフティネットが行き届くことを、カウンセラー・スタッフ一同心より願っております。

新行内勝善(精神保健福祉士、公認心理師)


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