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メンタルヘルス通信

98号 「バイアスはハラスメントの温床となる」

2023年3月2日
メンタルヘルス通信

 

本号特集「バイアスはハラスメントの温床となる」<メンタルヘルス通信 No.98>

今号のメンタルヘルス通信は、「バイアス」のなかでも、
自分自身が抱いていることに気づかない「アンコンシャス・バイアス」を中心に取り上げています。

ハラスメントや虐待を考える上でのポイントとなる、アンコンシャス・バイアスですが、
診断調査結果から見える傾向や、Google社での研修の取組など様々な角度から解説しています。
ぜひご一読ください!

メンタルヘルス通信は、イントラネットへの掲載やプリントアウトしての配布など、
従業員の皆様へのメンタルヘルス啓発活動などにご活用ください。

【PDF版】
メンタルヘルス通信_第98号(PDF)

【テキスト版】
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NO.98 バイアスはハラスメントの温床となる
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<<アンコンシャス・バイアス診断>>

バイアス(≒傾向、偏り、先入観)は、ハラスメントや虐待を考える際のポイントとなります。
アンコンシャス・バイアス
(unconsious bias)とは、直訳すると無意識のバイアスですが、知らず知らずに持っている、当たり前だと思い込んでいるようなバイアスのことを言います。
このため、「常識」がアンコンシャス・バイアスとなってしまうことは少なからずあります。

日本労働組合総連合会が2020年に、日常・職場の中でのアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)に関するアンケートとして、「アンコンシャス・バイアス診断」を行いました。

これは、(バイアスの認識を問う)全20問の設問から、「自分に思い当たるもの」をチェックしてもらうものです。50,871名から回答が得られました。

この中で、多くの人が「思い当たる」としてチェックした設問は次のものです。

【多くの人がもっていたアンコンシャス・バイアス】

1 「親が単身赴任中」というと、父親を想像する。(66.3%)
2 介護しながら働くのは難しいと思う。(58.4%)
3 体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う。(51.5%)

皆さんはいくつ思い当たるものがあったでしょうか?
興味深いことにはこの調査結果には男女差がありました。
男女差が大きかった設問は次のものです。

【男女差が大きかったアンコンシャス・バイアス】

4 LGBTの人は一部の職業に偏っていて、普通の職場にはいないと思う
5 LGBTであると聞くと、戸惑いを感じてしまう

6 体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そうだと思う。

LBGTに関する設問(45)では、男性が女性の2倍以上チェックをしていました。
6では男性56.6%に対して、女性32.5%と、男性の方が24.1ポイントも多くチェックしていました。

SOGIハラスメント

LGBTに関する設問の男女の違いというと、先に岸田首相秘書官更迭のニュースが思い起こされます。
秘書官の発言(*1)は、オフレコでのものでしたが、まさにアンコンシャス・バイアスがあったのでしょう。しかしこれは言うまでもなく、SOGIハラスメント(*2)です。

このように、バイアスの中にはハラスメントの温床となっているものがあるため注意が必要です。
実はGoogle社は、2013年より、社員と経営陣を対象にアンコンシャスバイアス研修や、それにまつわるツールを開発し、偏見を排除するための全社的な教育活動を始めています。

Google社は、「無意識の偏見がもたらす影響を減らすことができれば、多種多様な社員を雇用する機会が増え、その結果、これまで以上に革新的なソリューションを創出できるようになる可能性がある」と言及しています。(Google社HPより)

<<マイクロアグレッション>>

こうしたバイアスと深く結びついているのが、「マイクロアグレッション(Microagression)」です。
これは直訳すると「小さな攻撃性」ですが、1970年代に、精神科医でハーバード大学医学大学院名誉教授でもあったチェスター・ピアス氏が提唱しました。

明らかな差別には見えなくても、ジェンダーや人種などのステレオタイプ・偏見に基づく発言や行動で、無自覚に相手を傷つけることを言います。

例えば、LGBTQの人に対して「LGBTQなの?普通だね、そんなふうに見えないよね」という言葉は、発言した本人にとっては褒め言葉に近かったとしても、この発言の無意識裡には「LGBTQは普通じゃない」といった差別につながる可能性の萌芽が潜んでいるといえるでしょう。

こうしたことは非常に難しいものですが、私たちは本意にあらずして誰かを傷つけてしまうことが少なからずある、ということを忘れずにいたいものです。

新行内勝善(精神保健福祉士、公認心理師、ハラスメント防止コンサルタント)

*1 2023年2月3日、荒井勝喜首相秘書官は、性的マイノリティや同性婚に関連して「僕だって見るのも嫌だ。

隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」と発言し、同性婚の法制化などをめぐって「社会に与える影響が大きい。マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」とも発言したと報じられています。

*2 SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の略で、性的指向や性自認に関連して、差別やいじめ、暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせを受けること、あるいは、望まない性別での学校生活・職場での強制異動、採用拒否や解雇など、差別を受けて社会生活上の不利益を被ることをSOGIハラスメントと言います。


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