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メンタルヘルス通信

2023年10月10日

103号 「データから考える公助、共助、自助発刊!」

本号特集「データから考える公助、共助、自助発刊!」<メンタルヘルス通信No.103>

笑顔咲ク、メンタルヘルス通信、103号!

今号は自助、共助、公助について日本の状況や問題点を考えていきたいと思います。

✔公助を受ける「恥」の意識
✔日本人は本当にやさしく親切なのか
✔自己責任の強さと自助

ぜひご一読ください!

メンタルヘルス通信は、イントラネットへの掲載やプリントアウトしての配布など、
従業員の皆様へのメンタルヘルス啓発活動などにご活用ください。

【PDF版】
メンタルヘルス通信_第103号(PDF)

【テキスト版】
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NO.103 データから考える公助,共助,自助
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先の菅前首相は就任の際、目指す社会像として「自助・共助・公助、そして絆であります。」と掲げました。この3つの助けがあると大変心強く、メンタルヘルスにも大変よい影響が及びます。

今号では、関連したデータよりこの3つの助け(ヘルプ)について考えていきたいと思います。

<<セーフティネットの捕捉率:20~40%>>

公助の代表的なもののひとつが、最後のセーフティネットといわれる生活保護。
生活保護については、日本の生活保護の割合(受給人数が人口に占める割合や、生活保護支出額がGDPに占める割合)が国際比較的に見て低いことや、捕捉率が低いという現状があります。

捕捉率とは、生活保護を受給できる状況にある人のうち、実際にどのくらいの
人が生活保護を受給しているのかの割合。日本では20~40%と低い状況であり、最後のセーフティネットの網の目は粗いと言わざるをえません。

生活保護に関連して私たちが抱く思いには複雑なものがありますが、例えば「処罰感情」や「恥の意識」があります。処罰感情は生活保護の不正受給者に対してのものです、一時期マスメディアでも問題視されました。ただ実際には、不正受給自体は金額ベースでは全体の約0.4%これをもってして生活保護者全体へのバッシングとなっているのであれば酷です。

そして捕捉率の低さとも関連していると思われるのが恥の意識。
生活保護の利用は「死ぬほど恥ずかしいことだから」と考え、生活保護の利用にためらいを感じている人が多くいるのです。

<<共助:日本は128位(144カ国中)>>

共助とは、お互いに助け合うことです。「日本人はやさしい、親切だ」というイメージもありますが、実際にはどうなのでしょうか。

英国のNPO団体Charities Aid Foundation が公表したWorld Giving Index 2018というレポートがあります。その中に寄付やボランティアの頻度を基に世界各国の「共助」レベルのランキング
を公表していますが、調査対象となった世界144カ国中、なんと日本は128位であり、先進国としても最低ランクに位置していました。

この調査では、過去1ヶ月の間に、下記の3点を行った人の割合を、国ごとに調べています。

1 困っている見知らぬ他者の手助けをした
2 慈善団体に寄付した
3 ボランティア活動に時間を割いた

日本の割合とその順位は、1が23%(世界142位)、2が18%(同99位)、3が23%(同56位)でした。
1は共助の基本中の基本ですが、最下位といってもいい順位は、大変深刻ではないかと思われます。

<<自助努力、自己責任の落とし穴>>

『厚生労働白書』(平成20年版)では、「国民生活は国民一人一人が自らの責任と努力によって営むこと(「自助」)が基本」とあり、『防災白書』(令和2年版)では、「家族も含む「自助」、近隣住民等の「共助」、救助隊による「公助」」とあります。つまり、自助とは、家族を含めた自己責任と努力が基本としています。

自助については、筆者自身の相談現場からの実感となりますが、筆者が思うのは「ここまで大変になる前にもっと早くに誰かに相談できたら、違っただろうに」ということです。相談しなかった理由は様々ですが、例えば、前に相談したときにちゃんと理解されなかった、軽くあしらわれたなどという人もいれば、家族とは仲がいいが心配かけたくない、迷惑かけたくないから相談できないという人もいます。

筆者自身がこの相談抑制のハードルとなってしまっていると感じるのは、自助努力、自己責任意識の強さです。

これが強いと誰かの力が必要な本当に大変なときにさえ、誰にも頼れずに困難に陥ってしまうからです。そういう状況はなんとかなくしたいと考えています。

新行内勝善(精神保健福祉士、公認心理師)


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