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メンタルヘルス通信

2023年8月10日

102号 「『相談にのっても、役に立ててない・・・』発刊!」

本号特集「『相談にのっても、役に立ててない・・・』発刊!」<メンタルヘルス通信 No.102>

笑顔咲ク、メンタルヘルス通信、102号!
今号は「相談を受ける人」のお悩みについてです。

メンタルヘルスの専門家として、企業や学校等でお話をさせていただく際、「相談を受けても、話を聞いているだけで進展ができない。私はどうしたらいいですか?」
とお声がけいただく事が何度かあります。

そこで、メンタルヘルスの専門家としての回答を、3つのポイントとしてまとめました。

ぜひご一読ください!

メンタルヘルス通信は、イントラネットへの掲載やプリントアウトしての配布など、
従業員の皆様へのメンタルヘルス啓発活動などにご活用ください。

【PDF版】
メンタルヘルス通信_第102号(PDF)

【テキスト版】
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NO.102 相談にのっても、役に立ててない…
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メンタルヘルスの専門家として企業や学校で話をしていて、何度か聞かれる質問に以下のようなものがあります。
「友人から相談を受けているんですけど、毎回毎回私はただ聞いているだけ、それでいいのかなって。
話を聞いてるだけで特に進展もなく、私は何もできていなくて、役に立っているのかな、それでいいのかな、と思っているのですが、、、私はどうしたらいいですか?」
また、友人に何とかしてあげたい、だけど自分じゃ何もできていないといった無力感にさいなまれていたりもします。
こういったときに筆者がその人に対してかける言葉は大きく3つです(相談のポイント)。

1 相談は実はとても役に立っている
2 友人を守る、支援をつなぐ
3 自分自身をも守る

<<所属感の減弱>>

まずはじめに、少し専門的な話になりますが、自殺の対人関係理論から説明します。
その理論では、特に自殺のリスクを高めるものに、「所属感の減弱」と「負担感の知覚」があるとしています。所属感の減弱とは、まわりの人とのつながりがなくなってしまうと感じられることです。
2021年に「孤独・孤立対策担当大臣」が任命されていますが、自殺対策において孤独・孤立対策は最重要課題です。自殺を試みてしまう方の多くは、所属感の減弱、つまり、人とのつながりがなくなってしまったと感じている状態にあります。
(なお、もうひとつの負担感の知覚とは、自分がいることがまわりのお荷物になってしまっている、自分なんていない方がいい、迷惑ばかりかけてしまっている、といった精神状態のことです。)

<<Point1.実はとても役に立っている>>

それでは話を戻します。
悩みごと・困りごとを持っている方が、誰かに相談したくて話をきいてほしくて、そんなときに、誰かが自分のことを大事に思って、親身に話を聞いてくれることはとても意味のあることです。

逆に、誰も聞いてくれない、誰かに話したけれどちゃんと理解してくれなかった、などとなると、その人は大きく失望し、さらに深刻さをきわめてしまいかねません。

そして人間関係を閉ざし、孤独・孤立の悪循環に陥ってしまう方も少なくないのです。
このため、困っている人の話を聞く、親身に聞く、相談にのる、ということは、孤独・孤立の対極にあります。相談できる人がいる、話を親身に聞いてくれる人がいるという、そのこと自体が悩んでいる人の非常に大きな力となっているのです。

<<Point2.友人を守る、支援をつなぐ>>

親身になって話をきくとき、友人をさらに守るために、自分が話を聞くだけで十分であるのかを、もうひとつの冷静な目でも見ていきましょう。
そして、さらに他の支援が必要なときにはつないでいきましょう。

例えば、医療が必要そうな際には、医療につなぎます。よく見るべきポイントとしては、身体症状など不調が心身に現れてきているかどうかです。
不調は、胃腸、頭痛、吐き気、チック、顔色等々、身体のさまざまなところに現れます。
あるいは、必ずしも身体に現れるものに限らず、「眠れない」「食欲がない」「会社や学校に行きたくない」といったことが続くこともあります。
そういったときには、医療機関受診や、私たちのようなメンタルヘルスの専門家であるカウンセラーに相談してみることを友人と話して、支援をつないでいきましょう。

<<Point3.自分自身をも守る>>

何よりも避けなければならないのは、共倒れ、あるいはどちらかが倒れてしまうなど、つぶれてしまうことです。
そうならない為には、自分自身をも守っていくことです。
決して無理し過ぎないこと、自分で抱え込み過ぎないこと。
自分で抱えきれないようなときには、是非私たちのようなメンタルヘルスの専門家に気軽に相談してみてください。

新行内勝善(精神保健福祉士、公認心理師)


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