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メンタルヘルス通信
東京メンタルヘルス通信臨時号
<令和最新! ハラスメント問題の傾向とは ~職場のセクハラ問題を中心に~>
職場のハラスメント問題、最近では“Me too”運動の流れもあり、多くの方が気になっていることと思います。また2019年6月、国際労働機関ILOでも、ハラスメントに特化した初めての労働基準が条約として採択されました。
これは契約上の労働者だけでなく、実習生や採用応募をしようとしている状態も含め、女性に限らず全ての人を職場でのハラスメントから保護しよう、というものです。残念ながら日本はまだこの条約に批准していませんが、日本だけでは経済が成り立たないのですから、批准していないからOKということにはならないでしょう。
ところで、私が担当したハラスメント研修でも、気になる女性に声をかけたいけれど、いったいどこからがセクハラになるのでしょうか、といった質問をよく頂きます。
(業務外のお誘いで、どこからがセクハラになるのか…答えと解説は後半に)
こちらが好意を持っていても、相手も同じとは限りませんよね。
それに、勇気を出して嫌だと断っても「嫌よ嫌よも好きのうち」と意に介さない人もいれば、そもそも断れない相手だからこそ、我慢している内にエスカレートしていく被害もあるでしょう。
まずは言われた側、された側が「嫌です」と声を上げる事も大事ですが、相手がそもそもノーなんて言えない関係(あるいは言ったら何か不利になるのでは、と思っている状況も含めて)だからこそ話がこじれている場合もありますので、職場での言動には充分な配慮が必要です。
セクハラ認定がこわいから…といって、女性には声をかけずに男性だけでグループができてしまうと、グループから外れた女性だけ情報が入ってこなくなるなど、例え相手に良かれと思っていても情報格差ができてしまったり、過剰な配慮がトラブルの原因になることも多いです。
またこれは、男女間だけでなく、仕事後のお酒の付き合いに対応できない事情を抱えた男性にとっても起こりえる話です。
多様性という考え方も広がりつつありますが、従来のような大卒・男性・正社員で、滅私奉公のような労働に対応できるメンバーだけが過剰に重宝される状態では、これからの人手不足や、育児・介護をはじめとした従業員のライフイベントの発生などの様々な場面に対応しきれなくなります。
また今は遅くまでの残業に対応できたとしても、65歳の定年まで、怪我も病気も介護の心配もなくバリバリ働ける、という方は少ないでしょう。
定年後の再雇用で正社員でなくなったら、同じ仕事なのに待遇が大幅に低下する、という現象も正社員偏重の裏返しな訳ですから、多様な働き方への対応はどのような状態でも働き続けるための布石ともなるでしょう。
ところで、ハラスメントとは「嫌に思うこと」、だから相手が嫌かどうかで勝手にハラスメント認定されてしまうのでは、これじゃ言ったもん勝ちじゃないか、と過剰に恐れている方も多いと思います。
同じホメ言葉をかけても、「但しイケメンに限る」なんてセクハラ扱いされたら身もフタもない、と思った方もいらっしゃるのでは?
日本ではまだなじみが薄いかもしれませんが、人種問題に敏感な海外では、本人の努力で変えられない容姿や身体的特徴については、そもそも誉め言葉であってもNGとなっています。
相手の気持ちを思いやることももちろん大事ですが、最近では、相手がどう感じたか、というあいまいな基準よりも事実の段階でハラスメントを特定しようという流れが起きています。
例えばマタニティ・ハラスメント(マタハラ)でも、本来使えるはずの制度の活用を妨害することそのものが、相手の感情に関係なくハラスメントである、と法律でも規定されるようになりました。
また、大学や研究機関でのアカデミック・ハラスメント(アカハラ)においても、研究と結婚の二択を迫ったり、指導教員が学生の論文を無断引用すること、単位認定の成績開示に応対しないことなど、事実そのものでハラスメント認定し、実例を挙げてガイドラインで公表している大学もあり、感情論だけではないハラスメント問題の扱いがされてきています。
昨今の過剰なハラスメント意識の高まりで、適切な範囲の指導でさえ被害者意識によってハラスメントと訴えられ、現場が混乱しているケースもちらほら見受けられます。
(ハラスメントの過剰主張によるハラスメント、ハラ・ハラなんて言ってる方もいますね)
上司や指導者にとって適切な指導がしづらくなってしまう環境では、指導される側も、今後の成長の機会を失う原因にもつながります。感情的に被害を訴える前に、まずは一旦、なぜそのような言動がなされたのか、どう指摘されたら良かったのか、落ち着いて考えてから行動する必要があります。
こういったときは、ひとりで考えていても煮詰まってしまいますので、利害関係のない外部専門カウンセラーに相談したり、専門家としての知識やアドバイスをもらうなど、第三者の助けを借りるのも有効な手段です。
職場のセクハラというと、男性から女性、上司から部下、といったパターンがすぐに思い浮かびますが、同性間でも起こりえます。男性の上司が男性の部下を、望まないのに女性が接待する所へ連れて行ったり、先輩女性が後輩女性にプライベートな内容や、出産に関連して性生活の話を根掘り葉掘り聞きだす…等々。
同性間だからこそ相手に自覚がなかったとしても、仕事に関係のない言動で嫌な思いをして、転職を余儀なくされるケースも起きています。
例え悪意がなくても、上司や先輩といった立場があるだけで相手は断りづらくなっています。自分がされて嫌な事はしない、自分が良くても相手が嫌ならしない。相手がもし会社の偉い人だったり、恋人や身内だったらできないような言動は控えた方が良いでしょう。
(答え)相手に自由に断る余地があるか、で判断してください。
相手が自由に断れない状況では、例え言葉でOKされて食事などの席に同席していたとしても、心の底から納得しているかどうか判断できません。そのような場合は、業務外の誘い自体がハラスメントと思われる可能性がありますので、こちらから誘うこと自体を考え直した方が良いでしょう。
もし自分の誘いを断ったとしても、あとで評価や雇用、人間関係などで何も不利にならない、と相手が安心できて、自由な選択ができる状況か、よ~く考えてみてくださいね。
上司の誘いを断ったら、その後の評定や給与、不機嫌にさせて仕事に影響するかも…なんて考えたらなかなか断れないですよね。内心では不本意でも、機嫌をそこねないように食事や飲みについて行くでしょう。男性から女性だけでなく、女性の管理職から男性部下へのお誘いでも同様です。
一緒に飲みながら好き放題に会話ができて、楽しいのは自分だけになっていませんか?
年齢やキャリアを重ねたら、相手の言葉だけでなく顔色も確認するなど、相手に無理をさせていないか気を配る必要がありますね。
東京メンタルヘルス株式会社
産業カウンセラー
ハラスメント防止コンサルタント
花岡かをり
●関連情報
※当社ハラスメント研修についてのご案内は研修ページ をご参照下さい。