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メンタルヘルス通信

2019年9月4日

東京メンタルヘルス通信臨時号

<仕事で役立つ! カウンセラーが教える、マインドフルネス概論とその手法>

近年、マインドフルネスという言葉が世界的に認知されてきています。国際的な企業であるGoogleやAppleでも取り入れられたりするほど、その効果が注目されています。

私自身も臨床の現場においてマインドフルネスの実践指導をすることがあります。クライアントのエピソードや出来事に合わせて、その場で一緒に取り組むのですが、

マインドフルネスの考え方が理解できるだけで視野が広くなったり、実戦練習に取り組むことで自分の考え方や気持ちの変容に気付かれる方が多くいらっしゃいます。

 

それに加え、マインドフルネスは仏教の考えを元にしているのですが、宗教色が排除され誰でも取り組めるものとなっています。実際のやり方や考え方のほか、それをどのようにして日常生活で応用するかをご説明していきたいと思います。

 

■マインドフルネスの意味と目的

マインドフルネスには、「今に意識を向けて価値判断を加えず眺めること」「自分の気持ちや感覚を感じている心理状態」などの意味がありますが、もう少し身近な言葉で言うと、

「自分の考えや気持ちと距離をうまく取る」

という風に認識してもいいと思います。人は、目の前の出来事に意識を向けすぎると、周りが見えなくなったり、視野が狭くなって考えが固くなってしまいます。そこから、今の自分の状態に焦点をあわせることで物事を冷静に見られるようになるのが、マインドフルネスの目指すところになります。

 

■マインドフルネスの効果

マインドフルネスの状態になると、以下のような効果を感じることができます。

・自分や物事を客観的に見る事が出来る
・人から言われた事に振り回されにくくなる
・集中力改善
・身体のリラックス効果 etc.

このようにマインドフルネスになると、

物の見方が変わり、自分に対して客観的な視点を手に入れることが出来るので、冷静に物事を考えることが出来る様になります。

その結果、こころがリラックスすることで緊張や不安が減り、体にも良い影響が起こります。

 

■マインドフルネス瞑想について

マインドフルネスになるための取組みの一つに、マインドフルネス瞑想があります。マインドフルネス瞑想では、自分の考えたことや勝手に湧き上がってくる思考や雑念を、意識的に観察するという手法が行われます。いろいろなやり方がありますが、以下の方法が一般的に行われる練習の手順になります。

1. 椅子に座る、あるいは床に胡坐をかいて、目をつむります。
2. そのまま自分の呼吸や呼吸によって動くお腹に意識を向け続けます。
  この状態を最初は5分ほど取り組んでいきます。
3. すると、雑念や考え、または過去や未来のことなど何かしらの思考が、段々勝手に頭に浮かんできます。
4. その湧き上がってきたものを意識でキャッチするかのように捉えます。
5. 捉えられたら、2.に戻って同様に取り組み、3.4.5.の一連の手順を進めます。(以下、繰り返し)
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呼吸等への意識にとても集中できている方はなかなか雑念が出てこない場合がありますので、その際は取り組む時間を増やして雑念等が出てくるまで行うのがお勧めです。

この練習の目的であり、大事なポイントともいえるのは、無意識に考えてしまう思考や雑念に自分で気付けるかどうか、また、そのように考えてしまう自分というものを発見できるかどうかにあります。

発見することが出来れば、先ほどの手順2.のように、発見した自分を一旦どこかに置いて、自身の呼吸やそれによって動くお腹に意識を向ける動作に戻ります。この一連の手順を繰り返すことで、意識をコントロールする練習になります。

 

■日常生活での応用

このような活動を取り組んでいくことで、マインドフルネスな状態や感覚など様々なことを得られると思いますが、それをどうすれば日常生活で応用できるかをご説明したいと思います。

例えば、職場においてストレスの原因となっている同僚がいる場面を取り上げてみます。

【状況】:Aさんの同僚が近くでブツブツ何かを話している。
〈Aさん〉:「あの人、何を言っているんだろう?たまにあんなふうにブツブツいっているよなー。何か言いたいことがあるならはっきり言えばいいのになー。え、もしかして自分のことで、なにか言っているんじゃないか? だとしたら嫌だな。そういえば前に自分の変な評判を聞いたことあるけど、もしかしてあの人が言ったんじゃ? どうしよう。。。ちょっと怖くなってきた。。。」

Aさんを自分だと思って、想像してみてください。実際にこの同僚が何をしていたかは分かりませんが、Aさんは頭の中で様々な想像をしてしまいます。このような状況があった時、まずは同僚に対してどんなことを考えたか、またどんな感情を抱いたかをAさんは冷静にその場で振り返る必要があります。実際の場面でそれを実践するのはやや大変ですが、このように文面にしてあると分かりやすくなるはずです。最初は、起きたことを書き出してでもいいので、自分がその時考えたこと、感じたことを振り返ってみましょう。
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そしてその振り返りが出来たら、

「どこから考えや思考が生起して、それがその後どのように連想していったか」

を考えます。それに加え「Aさんの感情はどの時点から発生したか、または強くなっていったか」ということも考えてみましょう。Aさんは同僚の事が気になってくるにつれ、自分への被害について考え始めています。その結果、同僚に対する負の気持ちが芽生え始め、良からぬ想像をして、不安や疑いの感情を持ち始めました。
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思考の連想は、進めば進むほど加速していき止めにくくなっていきます。

それをストップさせるには最初の時点で気付くことが大事です。

しかし、Aさんは結局、様々なことを想像して自分で自分を不安にさせています。自分の思考が同僚に向き始めていることや想像が進んで不安になっていることに、自分で気付くことが本来は大切なのですが、疑問や不安が先行してしまい、それをすることが出来ていません。もしここで、自分の考えていることや感じていることを客観的に観察して、マインドフルネスな状態に持っていくことが出来れば、余計な考えを途中で辞めることができ、ストレスの根源となる負の感情の蓄積を防ぐことが出来ます。

 

■コツコツやること

このように、マインドフルネスは実際の生活場面で応用することが出来ます。

定義や考え方をしっかり頭にインプットすることが出来ればいいのですが、これはある種の心の筋トレなので、何度も意識して取り組むことで頭に定着していきます。

また瞑想のほかにも、マインドフルネスの練習方法は様々あります。自分に合ったものを選択し、少しずつ日常でも取り組んでみては、いかがしょうか?

 

 

【本コラムのポイント】
・マインドフルネスでは、「自分の考えや気持ちと距離をうまく取る」ことが大変重要。今の自分の状態に焦点をあわせることで、冷静に物事を見られるようになることが、マインドフルネスの目指すところ。

・普段の生活でのマインドフルネスの応用として、ストレスの原因に遭遇した際、最初は書き出してでもいいので、自分がその時どんなことを考え、どんな感情を抱いたかを振り返ってみる。その振り返りが出来たら、「どこから考えや思考が生起して、それがその後どのように連想していったか」を考える。これにより、余計な考えが途中で辞められ、ストレスの根源となる負の感情の蓄積を防ぐことが出来る。

・思考の連想は、進めば進むほど加速し、止めにくくなっていくので、最初の時点で気付くことが大事。

・マインドフルネスはある種の心の筋トレ。何度も意識して取り組むことで頭に定着していく。

 

 

東京メンタルヘルス
臨床心理士
宮碕景悟

●関連情報
※当社マインドフルネス研修についてのご案内は研修ページ[スキルアップ・テーマ別研修] をご参照下さい。


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