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メンタルヘルス通信

66号 「描画療法について」

<描画療法について>

描画療法とは、クライエントに絵を描かせることによって心の状態を図ったり、セラピーを試みる技法です。

20世紀の初めころにF.L.グッドイナフが開発した描画法による知能検査(DAM)が、臨床の場において取り入れられ、その後は知能検査に止まらず人格検査としても様々な描画法が研究されて用いられています。現在の代表的な描画法としては、バウム(樹木画)テスト(Koch)、HTP(家・木・人物画)法(Buck)、風景構成法(中井久夫)などがあります。
描画には知能以外にも人格的要素や精神面の状態像が見ることが出来ます。描いた人の感情や思い描いていること、また、普段意識していないことなどが描画として表現されるという特徴を持っています。
実際のカウンセリングでは、描画法を用いることで、クライエントが日常的に意識されていない自分の感情や思いに気づくことができるだけではなく、カウンセラーがクライエントの問題や状態をより深く理解できることになります。クライエントとカウンセラーは描画を通して、問題を共有しクライエントのパーソナリティを明確にして面接を行っていきます。
また、描画によってクライエントは自分自身の気持を表現することで、今まで抑えられていた不快感や不安、恐怖などが浄化され、気持ちが楽になるということも描画法の良い点です。
あるクライエントは、仕事上に悩みを抱えており、自分自身のパーソナリティに問題があるのではないかと相談に来ました。数回面接を受けているうちに、家族のこと、将来のことなども問題として挙げられてきたので、課題描画法を取り入れて見ました。課題に添って絵を描き、描画後にカウンセラーから質問に答えていくプロセスの中で、次第にクライエントは自分自身を振り返り整理していきます。そして、自分の一番の問題は転職するかどうか迷っていること、自分がこれから何をやりたいかということが次第に見えてきました。クライエントは描画によって自分を表現して浄化され、そしてモヤモヤしていたものがはっきしてきたことで、今まで気づかなかったことがわかり気持ちも楽になったようです。
描画法には課題を与えられて描いていく課題描画法と自由に描いていく自由画法があります。小さい子供は自由に描いて貰ったり、また、大人の方も自由画であったり、課題があった方が描きやすかったり、クライエントの状態によって使い分けます。そして、描画法は絵を描くだけではなく、絵を媒体としてクライエントとカウンセラーの関係性を築き、信頼関係を高めることもできます。また、話すことが苦手な方や、 自分の考えていることをうまく表現することが出来ない場合などにも有効です。

 

東京メンタルヘルス 臨床心理士 大串保美http://mentalhealth.jp/counselor_page/other_list#anchor10


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