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メンタルヘルス通信
5月病を乗り越えるには? ~レジリエンスを元に考える~
日常生活に支障をきたす前に!
ドタバタしていた新生活をなんとか乗り越え、ゴールデンウィークとなり、ホッとしている頃でしょうか。
他方、新しい環境に心や身体が疲れ、気分の落ち込みや、やる気が出ない、頭痛・腹痛、睡眠不足等が生じる人がいるのもこの頃です。これがいわゆる「5月病」です。
5月病とは正式な医学用語ではなく、心の病になる前の段階を指し、ほとんどの人は自然と改善していきます。ある調査*では約4人に1人がこの状態であると言われており、珍しくありません。しかし、一部の人は出社が難しくなる等、日常生活に支障が生じ、「適応障害」や「うつ病」など心の病として診断されることもあります。このような状態になってしまう前に回復する方法はあるのでしょうか?
*チューリッヒ生命 2018年 ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査
https://www.zurichlife.co.jp/aboutus/pressrelease/2018/20180516
回復する力=レジリエンス
精神的に落ち込んだ状態から回復する力は、心理学の用語で「レジリエンス」と呼ばれ、この力を高めることが、5月病を乗り切るカギと考えられます。
そして、様々な研究の結果から、レジリエンスを高める方法は以下の3点で状況・年齢を問わず効果的とされています。
- 他者からの情緒的なサポートを受けること
- 何らかのコミュニティに参加していること
- 日々のルーティン(日課)をこなすこと
例えば、子ども時代に不安定な家庭環境で育った場合でも、教師や親戚との絆が深い場合や、ボランティア活動等のコミュニティに定期的に参加していた場合では、成人期においてもレジリエンスが高いと分かっています。また、災害・事故のようなストレスが大きい状況が生じても、地域の行事を再開したり、なじみの店に通ったり、通院を再開する等、ルーティンをこなすことがレジリエンスを高めると言われています。
この3点は、5月病を防ぐ方法として大いに役立ちそうです。
レジリエンスを高める5つの具体的アプローチ
では、どのようなことをすればよいのでしょうか。具体的には以下の5点をおすすめします。
- 身体活動:例)散歩
- メンテナンス:例)かかりつけ医への通院
- 家事:例)植物の世話
- 内省:例)日記
- 他者との交流:例)友人とのお茶会
筆者の場合は、近所のお寺で開かれる骨董市を毎月覗きに行きます。そうすると、多少気分が落ち込んでいても、「この日は骨董市だから外出しよう」と心が切り替わり、行動するモチベーションへと繋がるので生活習慣も自然と整います。また、実際に足を運ぶと、店員さんに声をかけてもらうこともあり、他者との交流をきっかけに、充実感や安心感を得られます。また、多少のストレスを抱えていても、いったん脇に置けるような感覚になり、徐々に精神的に回復していくように思えます。
ここまでの話を聞いて、皆さんから「そんなのしょっちゅうやってるよ!」とツッコミが入るかもしれませんが、新生活の忙しさに追われ、ついついルーティンを置き去りにしがちです。このような何気ないことの積み重ねが、レジリエンスを高めるのです。何も、特別な訓練は必要ありません。
ぜひ自分に合ったものを見つけてみてください。意外と「これだけはゆずれない」といった、自分らしさを発見できることがあります。そして、これらの工夫で皆さんが新生活を乗り越えられたら幸いです。
執筆者:谷 里子(臨床心理士、公認心理師)
東京メンタルヘルス カウンセラー
大正大学人間学研究科 福祉・臨床心理学専攻 博士後期課程満期退学。
これまで教育現場や児童精神科にて心理的アセスメントに尽力してきました。子どもの持っている能力を見極め、回復力を見いだす支援・研究に日々取り組んでいます。