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メンタルヘルス通信
59号 「日本人のメンタリティ」
<日本人のメンタリティ>
最近の日本人の「メンタリティ」(mentality)、つまり心的傾向や精神状態は以下のような傾向があると筆者は思っている。この根拠は様々な調査や面談を通して得たデータを基にしている。
1)自己表現や自己主張が苦手
対人関係では萎縮したり、ひきこもったりする傾向が強い。またキレやすくなったり、暴力を振舞ったりなどの行動化が起こりやすく両極端な言動を示す。
2)孤立した行動をとることが多い
集団で行動しなくなった。群れるよりも孤立した行動を取ることが多く、仕事でも勉強でも一人で調べ、一人で考えることが多く、みんなでガヤガヤといった 感じが消えた。
3)周りの目を気にする
それでいて周囲の目が気になるといった傾向が見られる。自分はどう評価されているか、どう噂されているのかが気になってしようがない。
4)相手の気持ちを理解できない
話をしていても相手の言葉や言った内容にだけとらわれてしまい、相手の気持ちを汲み取ることができない。それは語り口、表情、態度などのボディランゲー ジから読みとるものであるが、それが苦手になっている。
自己表現や自己主張がうまくできないのは自分の気持ちに気づかなかったり、それを自分の言葉に含ませることができないからである。暗記させられた台詞やマニュアル、メールだけに頼りすぎると気持ちを表現しにくくなる。
「いらっしゃいませ、こんにちは、ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」ばかりを機械的に繰り返していたら、人は他人の気持ちどころか自分の気持ちにさえ触れられない。まずは自分の気持ちに気づき、それを言葉にしてみることである。下手でも良い。そこには生きたコミュニケーションが展開する。
自己表現や自己主張が苦手な人は「上手に言えるだろうか、相手は受け止めてくれるだろうか」と不安になる。しかし、それもその人の気持ちであり、そのことを伝える。「上手に伝えられるかとても不安です。それに受け止めてもらえなかったらどうしようと考えたりしています。だから、最後まで話を聞いて下さい。」身体から力を抜いて素直に伝えることができれば、相手もきっと受け止めてくれるはず。
孤立した行動も「人間関係は面倒だ」と思っているからである。不信感や疎外感から関係を持ちたくないと考えてしまう。こうなると人間関係はますます希薄化し、コミュニケーションの不全状態を招く。向き合って気持ちを確認したり、お互いに理解し合って和解するような場面も少なくなっていく。
今、日本人は孤立した行動を取る人が多い。「見ざる、聞かざる、言わざる」といった心理的防衛が働き、コミットメント(関わること)できなくなった。しかし、それでいて周りの目も気にしている。それはいじめられたり、排除されたりするのが怖いからである。「他者報酬型」ライフスタイルで生きてきたために主体性が欠如し、自分にとって大切な人生の選択に判断や決断ができなくなった。これが最大の自信喪失を招いている。本当の自分をどこに置いてきたのか、それを探すために「自分探しの旅」に出る人が多くなった。
自分の気持ちに気づかなかったり、理解できなかったりする人が相手の気持ちを理解したり、察することは困難である。いくら、「相手を理解して下さい」とか「相手の立場に立ってみて下さい」と言われても、自分のことが分かっていなければ共感的理解は難しい。
今、心の専門家と言われる精神科医やカウンセラーでさえ、心で心を治療(精神療法)することができなくなってきている。言葉の内容だけに頼ったり、患者やクライエントとしっかり向き合えない。まさに、日本人の情緒面の育成と自己表現に関する教育や養育をしっかりやっていく時期に来ている。