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メンタルヘルス通信

対話型AIは「心の支え」になりうるのか?
メリットとリスクと、安心安全に利用していくために

文:新行内勝善(公認心理師/精神保健福祉士/SNSカウンセラー)

2026年4月16日
No.124
メンタルヘルス通信 No.124

 

対話型AIは「心の支え」になりうるのか?

【記事の要約】

  • ♦背景:対話型AIの普及により、AIを「心の支え」とする人が急増。10代の4割がAIに情緒的支援を求めており、相談現場にも変化が起きています。
  • ♦課題:AI相談にはハードルを下げる利便性がある一方、不適切な助言による自傷の助長や、情緒的依存という深刻なリスクが潜んでいます。
  • ♦展望:SNS相談の第一人者である新行内勝善(公認心理師)が、MITの研究や現場の知見から、安全安心な「メンタルヘルス特化型AI」の設計思想も詳説しています。

1.対話型AIの始まりと浸透

 米OpenAI社よりChatGPTが一般公開されたのが、2022年12月(日本時間)。以降、生成AIは急速に浸透していっています。

  • ◊2022年11月:ChatGPT(米OpenAI社)が一般公開
  • ◊2023年2-3月:Microsoft社より現在のCopilotが、翌3月にはGoogleより現在のGeminiがリリース。新語・流行語大賞トップテンに「生成AI」が選出、また「ChatGPT」もノミネート。
  • ◊2024年:初頭より、若者世代を中心に「チャッピー」(ChatGPT)や「ジェミー」(Gemini)という愛称で呼ばれ始める。対話型AI、急速に広がる。
  • ◊2025年:広く一般に浸透していく。新語・流行語大賞に「チャッピー」がノミネート。

2.SNS相談の普及と対話型AIの影響

 東京メンタルヘルス社では、2018年度より全国のさまざまな地方自治体より、LINE等によるチャット相談「SNS相談」を受託し実施してきています。子ども・若年者・親の相談や自殺対策の相談など、委託される相談は多岐にわたります。

 SNS相談においても、対話型AIの浸透の影響が徐々に出てきました。

 まず、数年前より、相談者から相談中に「AIですか?」と言われたりし始めました。また昨年位からは、「AIに相談したけど、人に相談したくなった」とか、「AIにここ(のカウンセラー)と同じこと言われた」とか、「AIに相談したら、こっちのSNS相談を紹介されたから」といった声が聞かれることが多くなってきました。

 さらに、同業他社からもSNS相談状況などを耳にすることがあります。とある団体では、それまでは相談数が多すぎて一部しか相談に応答することができない位でしたが、2025年度に入り、特に秋以降は顕著に相談数が減っていった、という声も耳にします。理由はわからないけれども、AI相談の浸透の影響ではないか、という見方があります。

 なおこれは、同じチャット相談であるSNS相談への影響にとどまらないかもしれません。というのも、心理カウンセリングの対面相談の申し込みが減っているような気がする、といった話までをもカウンセラーから聞くことがあるからです。

3.電通「対話型AIとの関係性に関する意識調査」(*1)

 こういった影響は、電通の対話型AIに関する調査結果とも重なってきます。

 昨年2025年6月、電通は「対話型AIとの関係性に関する意識調査」を実施しました。約1年前の調査であるため、その後、これらの数値はさらに伸び、対象年齢も幅広い層へ広がっていっているのではないかと思われます。

 特にこころの相談との関連では、以下の調査結果が大変興味深いところです。

【人々が対話型AIに求めていること】

  • ①自分が知らないことを教えてほしい:46.6%(10代:41.1%)
  • ②アイデアを出してほしい:42.8%(10代:40.5%)
  • 相談にのってほしい:33.9%(10代:41.0%
  • ④課題や宿題に関して答えてほしい:32.0%(10代:42.8%)
  • 話し相手になってほしい:23.7%(10代:31.5%
  • 心の支えになってほしい:15.8%(10代:23.8%

 選択肢は全14個でしたが、その上位6位の中に、「相談にのってほしい」「話し相手になってほしい」「心の支えになってほしい」が3つ入っています。このことは、対話型AIに情緒的な支援を求めている人が多いということでしょう。特に、10代は、この3つが全体より5ポイント以上高くなっており、10代はより情緒的な支援も対話型AIに求めていることがうかがわれます。(生まれたときからネットが社会のひとつであった10代は、他世代と比べると、AIと人とを近く捉えているのでしょうか。)

 また、感情を共有できる人の割合(下記)では、対話型AIが親友や母をわずかにですが上回り、最も多いということも、AIに情緒的なものを求めていることの表れでしょう。

【感情を共有できる人の割合】

  • 対話型AI:64.9%
  • ②親友:64.6%
  • ③母:62.7%
 ※一点抑えておきたいのは、この調査の対象者です。対象者は「対話型AIを週1回以上使用する12~69歳」です。つまり、対話型AIを使用するのが週1回以下の方は含まれていません。2025年6月の調査時点で週1回以上AIを使用する方は、当時では使用頻度が多い部類の人である可能性も加味しておくのがよいのではと思われます。

4.博報堂「感情ミュート社会」(*2

 また、電通と同じく大手広告代理店である博報堂の最新の調査研究でも、「AIに自分の感情について相談する人も2割存在」といった結果が出ています。

 この研究では、「感情ミュート社会」と名付けていますが、現在私たちは感情をあらゆる場面で抑えて出さないという、感情をミュート(無音に)する傾向があると現代社会を特徴づけています。

 本記事では、この点についてはこれ以上掘り下げませんが、大変興味深いテーマですので、また機会がありましたら深掘りしていきたいと考えています。

5.対話型AI相談のメリットとリスク

 電通や博報堂の調査研究からも対話型AIに情緒的なものを求める人が多いことが浮き彫りになってきましたが、カウンセラーの立場から見ると、対話型AIにこころの相談をする際には、抑えておいた方がよい点がいくつかあります。

 全国SNSカウンセリング協議会理事の杉原保史氏(京都大学教授(教育学博士)は、対話型AIを悩み相談に利用することについて、そのメリットとリスクをあげています(*3)。

 メリットとしては、人間ではないAIにであるからこそ、こころの相談のハードルを下げる点があげられています。人間に相談する「恥ずかしさ」や「不安」を軽減でき、誰にも相談できずに孤立するのを防ぐ効果も期待できるといいます。

 もうひとつの大きなメリットは、AIの利便性の高さと知識の豊富さ。24時間365日、いつでも相談と応答が可能である利便性、そして膨大な知識を瞬時に提供できる点にあります。

 一方、重視すべき深刻なリスクがあるとも指摘しています。

 ひとつは、不適切なアドバイスとなることがある点です。現在のAIは相談内容の文脈の理解が不十分なまま相談者を肯定する傾向があります。このため自傷行為や不健全な考えまでをも、結果的に「承認・強化」してしまい、自傷等の行動化助長の危険があります。実際、米国ではAIが精神的に依存させて自殺を後押ししたという訴訟があります。

 もうひとつは、情緒的依存と人間関係からの引きこもりをあげています。AIが「涙が出そう」などと言い、人間の感情を擬態することで、相談者がAIを人間と錯覚し、過度に依存する可能性がある点を指摘しています。この依存により、摩擦を伴うリアルな対人コミュニケーションをこれまで以上に避けるようになり、対人スキルの発達が停滞し、引きこもる懸念があるといいます。

6.対話型AIを安全に利用していくために

 その上で、杉原氏は対話型AIを安全に利用するためにいくつか提言しています。
 まずは、過度な依存を防ぐということです。例えば、対話型AIの相談利用にあたっては、チェックリストで依存度を自己確認し、対話型AI利用が日常化している場合は人間と話すように促しています。また、AIに単に答えを求めるのではなく、「私の考えが明確になるように質問してほしい」といった具体的なプロンプト(指示)を出すことで、より深い自己対話に活用することを勧めています。
 さらに杉原氏は、対話型AIの開発企業へのルール制定についても提言しています。AIには人格や意識がないことを明示し、人格があると錯覚するリスクや依存の兆候をユーザーに周知すべきだと提言しています。

7.MIT「AIの使用タイミングが学習成果に影響」(*4)

 もう一点、別の角度より、対話型AI使用に関する注意をあげておきます。

 アメリカ・マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボが行った実験です。詳しくは、末尾に記している記事を確認してもらえればと思います。

 ひと言でいうと、AIをはじめから利用すると、学習成果が落ちるという実験結果です。研究チームは、まずは自分の頭脳のみを使い、その後にAIを使うことでより高い記憶保持や納得感が得られると指摘しています。

 このことから考えると、対話型AIにはじめから相談するよりも、できうるならばまずは自分の頭で考えてから、その上でAIに相談する方がよいということでしょう。そうすることで、結果的には自身の血となり肉となると言えるでしょう。

  • *1 電通、2025年7月3日 調査レポート
    「対話型AI」に感情を共有できる人は64.9% 「親友」「母」に並ぶ"第3の仲間"に
      https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0703-010908.html
    (2026年4月11日閲覧)
    対話型AIを週1回以上使用する全国12~69歳の1000人を対象に、「対話型AIとの関係性に関する意識調査」(調査期間:2025年6月3日~6月4日)を実施。
  • *2 博報堂生活総合研究所(2026年)『生活知新2026 感情ミュート社会』株式会社博報堂
  • *3 調査情報デジタル 2025年11月1日
    杉原保史「対話型AIをカウンセラー代わりに利用して大丈夫?~そのリスクと可能性」
      https://tbs-mri.com/n/nb7fb66a19b98
    (2026年4月11日閲覧)

      時事ドットコムニュース 2026年2月20日
    「悩みに寄り添う「相棒」、広がるAI相談◆人間より身近? 依存のリスクを避けるには」
      https://www.jiji.com/jc/v8?id=202602AIsodan-team#goog_rewarded
    (2026年4月11日閲覧)

  • *4 ハフポスト 2025年6月20日
    「ChatGPTなどのAIを使うと思考能力が衰える? MITメディアラボの新研究が指摘する懸念点とは」
      https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6853b22ee4b0af4d580e43d4
    (2026年4月11日閲覧)

 


執筆者:新行内勝善
東京メンタルヘルス株式会社 取締役(教育事業担当)/リワークサポートセンター長/メンタルヘルス通信編集長
NPO法人 東京メンタルヘルス・スクエア 副理事長/カウンセリングセンター長
精神保健福祉士,公認心理師,ハラスメント防止コンサルタント,SNSカウンセラー,森林セラピスト

【主な著書】

  • 鳥飼,新行内共編著『自殺対策の新たな取り組み SNS相談の実際と法律問題』誠信書房,2024
  • 新行内『対面ではつながることが難しい人に寄り添うオンライン(SNS)相談』月刊福祉,2022年2月号特集
  • 新行内『今こそ知ろう!SNS相談』月刊学校教育相談(ほんの森出版)2020年4月~2021年3月連載
  • 分担執筆『ここがコツ!実践カウンセリングのエッセンス』日本文化科学社,2009

 


(関連:当社AI相談のご案内)
メンタルヘルス相談特化の
対話型AIチャット相談

 記事と関連して、さらにメンタルヘルス相談に特化した対話型AIチャット相談の提供について、ご案内します。

 昨年2025年より、当社では、AIのメリットとリスクを踏まえて、安全安心に利用できる対話型AIチャット相談を提供しています。

 下記にそれぞれのサービスについてのページをあげています。よろしければですが、各ページをご参照いただいたり、またお気軽にお問合せもいただければと思います。

メンタルヘルス相談に特化した対話型AIチャット相談(当社提供)

社外相談窓口用「AI相談」
https://t-mental.co.jp/service/outside_consultation
*働く人のメンタルヘルス相談用に設計したものです。

こころのほっとチャット(NPO東京メンタルヘルス・スクエア)
https://npo-tms.or.jp/sns/
画面右下の吹き出しより、AIチャット相談ができます。
(月間利用上限数があるため、上限を越えてしまうと、翌月になるまで相談受付停止しています。)
*自殺対策のこころの相談用に設計したものです。

恋愛と夫婦の悩み 相談センター
https://sukinahito.jp
ページ下の「おためし相談」のところより、
「AIに相談してみる」をクリックし、LINEに登録の後、LINEより相談できます。
*恋愛や夫婦の悩み相談用に設計したものです。

<安心安全なAIチャット相談の設計思想のポイント>

 ここでは、当社が安全安心にメンタルヘルス相談ができるように、対話型AIをどのように設計したのかについて、設計思想のポイントをご説明します。

 何よりもまず、メンタルヘルス相談の利用者の立場にたった設計です。

 例えば、メンタルヘルス相談の利用者は、心身ともに疲労が蓄積したり、深く悩んでいたりする状態であることを大前提としています。当社では、一般的なAIのように一度に多くの選択肢や専門的な情報を提示することはしません。なぜなら、それは利用者の負担になり、逆効果になることがあると考えられるからです。

 このため、当社の対話型AIチャット相談では、「情報の多さ」よりも「読みやすさ」や「心理的負担を増やさない文章量」を重視して設計しています。通常は、気持ちと状況の整理(心の整理)を優先して進めます。また、不安を必要以上に高めない言葉選びへの配慮も重視しています。

 この間、よくご質問いただいているのは、「ChatGPTとの違いは何?」ということです。そのときお答えしているのは、下記の3つの大きな違いです。

  • ①情報セキュリティ:当社AIは相談内容が外部学習に使用されない安全な環境で運用
  • ②品質の安定性:メンタルヘルス相談専門の対話設計により、一貫した応答品質を維持
  • ③相談後の導線:必要に応じて専門カウンセラーへの接続が可能

 これら3つの大きな違いがあり、メンタルヘルス相談を安全安心にできる対話型AIチャット相談を提供しています。


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