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メンタルヘルス通信
世界メンタルヘルスデー ~メンタルヘルスへの理解を深めよう~
10月10日は「世界メンタルヘルスデー」です。メンタルヘルスは身体の健康と同様に大切であり、個人の問題であると同時に社会全体の課題でもあります。世界中でメンタルヘルスに対する意識は徐々に高まっていますが、まだまだ誤解や偏見が多いのではないかと感じています。そこで、今回のコラムではメンタルヘルスについて改めて考えてみたいと思います。
メンタルヘルスとは?
皆さんは「メンタルヘルス」と聞くとどのようなことをイメージされるでしょうか? 直訳すると“精神的健康”となりますが、私が普段活動する産業保健(EAP)の分野で人事の方々等とお話をしていると、逆に、どちらかというと精神的な不調や、うつ病や適応障害などの精神疾患等の“精神的不健康”をイメージされる方が多いようです。
WHO(世界保健機関)によると、メンタルヘルスとは「人々が自分自身の能力を発揮し、生活上のストレスにうまく対処し、よく学びよく働き、自身が属するコミュニティに貢献できる良好で整った心の状態(mental well-being)」と定義づけられています。この定義には、「生活」や「働く」こと、「コミュニティ」という言葉が出てきているように、人のこころと社会は影響し合っており、メンタルヘルスは個人のこころの健康状態だけを表すものではないとも言えます。
スティグマ~精神疾患に対する社会的烙印~
スティグマとは、元々は古代ギリシャにおいて犯罪者や奴隷等を識別するための身体に焼き付けられる烙印や傷跡のことを指す言葉で、烙印を押された人との交流は避けるべきという時代がありました。現代では医療や福祉の領域等において、負のレッテルをはられるような「差別」や「偏見」を意味する言葉として使用されています。
メンタルヘルスに関するスティグマは、精神的な健康問題を抱える人々にとって大きな障壁となります。メンタル不調や疾患を一個人の「弱さ」や「怠惰」として捉える誤った認識が当事者を苦しめることがあります。身体の不調や病気になることが誰にでもあるように、精神的不調も誰にでも起こり得ることです。しかし、メンタルヘルスの問題は見た目では分かりにくいこともあるため、その病苦に対する周囲の理解を得ることが難しい場合も少なくありません。
大変残念なことに様々なスティグマは、誤解や無知から生じることが多く、メンタルヘルスの問題を抱える人々が社会から孤立したり、適切な支援を受けられなかったりする原因となります。身体の健康・不調と同じような感覚でこころの健康・不調に関しても気軽に話題にできて助け合うことができる、そんな社会になっていくことを筆者は強く願っています。
人と社会をつなぐメンタルヘルス
人は社会的な生き物であり、他者とのつながりがメンタルヘルスに大きな影響を与えます。孤立感や疎外感はメンタルヘルスの悪化を引き起こしやすく、逆に他者や社会とのつながりを持つことは、ストレスの軽減だけでなく幸福感にもつながります。
メンタルヘルスと社会的つながりを強化するためには、日々のコミュニケーションを大切にする、趣味や興味を共有する、地域のイベントや活動へ参加してみる、困った時には専門家を頼ってみる等々が考えられます。これらの取り組みを通じて、心の苦痛や孤独感を軽減し、精神的な支えや共感、自己効力感が向上するなど、社会との一体感を得ながら幸せを感じられることができるでしょう。
そして個人の幸せはコミュニティや社会の幸福にもつながっていき、結果として社会全体のメンタルヘルスの向上に寄与します。
ポジティブな感情を大切に
世界メンタルヘルスデーを機に、メンタルヘルスの重要性について改めて考え、メンタルヘルス(精神的健康)につながるための行動をとっていきましょう。
そのための鍵は、“ポジティブな感情”です。例えば、楽しい、嬉しい、癒し、やすらぎ、気持ち良い、充実感、感謝等です。
どのような行動をとると、どのような気持ちになりやすいでしょうか。自分自身に対しての行動ももちろん大切ですが、誰かと一緒に、誰かのために、誰かに向けて、という“人とのつながり”の視点も忘れずにいましょう。
メンタルヘルスは、私たちの健康や幸せに欠かせない要素です。自分自身と周りの人々のメンタルヘルスを大切にしていきましょう。
執筆者:田村 三太