メンタルヘルス・コラム

パワハラにならない部下指導のための5つのポイント

2019.09.11

パワハラ・パワーハラスメント

 

今年5月に改正労働施策総合推進法(通称 パワハラ防止法)が可決・成立し、いよいよ来春以降、企業に対し、パワーハラスメント(以下、パワハラ)の防止措置を講じる義務が課されることになりました。

パワハラは働く人のメンタルヘルスを悪化させ、仕事への意欲や活力の低下を引き起こす重大な問題です。
パワハラをなくすにはどうしたらよいか、誰もがいきいきと働ける環境をつくり職場の活力と生産性を高めるため、職場のパワハラ防止に積極的に取り組んでいくことが、今、強く求められつつあるといえるでしょう。

さて、パワハラには様々なものがありますが、中でも多いのは上司が部下に対してパワハラの加害者となってしまうケースです。
そしてそのような場合、いちばん問題になりやすいのが「指導とパワハラの違い」です。

管理職を対象としたパワハラ防止研修においても、受講者にとってもっとも悩ましいのは部下への指導の仕方に関することであり、「どこまでが指導でどこからがパワハラになるのか?」、「何度言っても分からない部下はどう指導したらよいのか?」といった疑問の声や、「ちょっと強く注意しただけでパワハラだと言われたら怖くて部下指導などできない」といった困惑の声が多く聞かれます。

そこで今回は、上司が部下を指導する上で、うっかりパワハラの加害者になってしまわないためにはどのようなことに注意すればよいか、そのポイントを5つ紹介したいと思います。

 

 

1. 指導とパワハラの違いを理解する。

指導とは、行動の改善や内面的な成長など、相手によい変化を促そうとする働きかけです。
その働きかけは、相手に伝えたいことをよく理解させたり、どうしたらよいかを考えさせたりするため冷静かつ穏やかになされ、そこには自ずと、相手の気持ち、やる気や主体性を大切にするような配慮が存在しています。

一方、パワハラの場合には、上司はたとえ指導のつもりであっても、その働きかけは感情的、一方的なものであり、相手が今どう感じているか、相手の気持ちに対する配慮は忘れられています。

部下を指導する時は、何のために指導するのかをよく理解し、冷静かつ穏やかに、相手の気持ちを考えながら働きかけることを忘れないようにしましょう。

 

 

2. 自分の感情に注意を払う。

指導のつもりがパワハラになってしまうのは、そこに怒りの感情が入り込んでくる時です。
怒りの感情が強くなるほど冷静さや穏やかさを保つことが難しくなり、相手の気持ちを察する余裕も失われ、それがパワハラにつながっていきます。

したがって部下を指導する時は、まず、自分の中に怒りの感情がないかどうか確認することが大切です。
そしてもし怒りの感情がある時は、気持ちを切り替えて冷静になることを優先し、落ち着いてから指導するようにしましょう。

人が怒りの感情をもつのは自然なことであり、それ自体が悪いわけではありませんが、怒りの感情をもつことと、それを相手にぶつけることは異なるということを、よく理解する必要があります。

また、怒りの感情を無理に抑え込んだり消し去ろうとしたりする必要はありません。
むしろ、怒りの感情を何とかしようとするほど、そこに強く注意が向いてしまい、怒りの感情から離れることがいっそう難しくなります。
自分の中に怒りの感情があることに気づき、それを認めた上で、ただ気持ちを切り替えればよいのです。

気持ちを切り替えるには、それ以上考えるのをやめる、深呼吸をする、ゆっくり10まで数える、その場からいったん離れるなど様々な方法がありますが、気持ちを切り替えるにはどうするのが有効か、自分に合ったやり方をいろいろ試してみるとよいでしょう。

いずれにしても、怒りの衝動はそう長く続くものではありません。
一呼吸おいて、衝動のままに行動することを控えるだけで、怒りの衝動は時間の経過と共に自ずと弱まっていくはずです。

 

 

3. どうして欲しいかを素直に伝える。

パワハラをしやすい上司に共通するのは、「何で?」、「どうして?」と質問しながら相手を責め、追い詰めるやり方です。

「何でできないんだ?」、「どうしてやらないんだ?」、「何度言ったら分かるんだ?」といった問いかけは、部下にとって非常に答えづらいものです。
それは何か答えても、「言い訳するな」などと、また言い返されてしまうからです。
それを見越して先回りして謝ったとしても、「謝れば済むと思ってるのか?」などと言い返され、どう答えても否定されるため何も言えず黙っていれば、それもまた、「黙ってないで何とか言え」などと責められます。

結局、こうした問いかけは質問の形を装った怒りの表現であり、部下がどう答えようと、上司の怒りが収まるまで延々と続きます。
そして部下はどうすることもできず、ただ責められ続けるしかないのです。

もし部下に対して、「何で?」、「どうして?」と責めたくなった時は、本当は相手にどうして欲しいと思っているのか、何を伝えたいのか、よく考えてみることが大切です。

たとえば、「何でできないんだ?」というのは、実はできない理由を知りたいわけでなく、本当に伝えたいのは、「これはちゃんとできるようになってもらわないと困る。だからできるようになって欲しい」という思いであるはずです。

そうであれば、最初から「こうして欲しい」と素直に伝えた方が相手にも分かりやすく、「では、そのためにはどうすればよいのか?」と、建設的な指導や話し合いもしやすくなるでしょう。

 

 

4. 指導の仕方を工夫する。

「何度言っても分からない部下はどう指導したらよいのか?」という問いの背後には、指導とは口で言って聞かせるもの、説明して分からせるものだという思い込みが潜んでいます。

そうした思い込みがあると、「分かるまで何度でも言い続けるしかない」、「もっと強く言うしかない」、「言って分からなければ痛みを与えて分からせるしかない」と次第にエスカレートし、それがやがてパワハラへとつながっていきます。

言って聞かせる、説明して分からせることだけが指導ではありません。
「何度言っても分からない」のであれば同じやり方に固執せず、部下の能力や特性なども考慮しながら他のやり方を工夫し、試してみましょう。

「何度言っても分からない」と、できないことを部下のせいにするのでなく、「どうすればできるようになるか?」を考え工夫し、働きかけることが上司の仕事でもあるはずです。

「何度言っても分からない」と嘆く前に、次の3点を確認してみるとよいでしょう。
① その問題について、なぜそうなっているか、どうしたら改善できるかを部下とよく話し合い、
  共に考える時間を充分にとったか?
② 部下の話をよく聞いて、部下の状況や気持ちを充分に把握・理解できているか?
③ その問題をどのように見立て、改善を図るためにどのような指導の工夫をしたか?

 

 

5. 信頼関係を築く。

パワハラ防止には、日頃から部下との間にしっかり信頼関係を築いておくことも大切です。

信頼関係があれば、それだけ意思の疎通が図りやすいためパワハラは起きにくく、逆に信頼関係がないと、ちょっとしたコミュニケーションの齟齬が強い不快感をもたらし、たとえ悪意のない言動であってもハラスメントと受け取られてしまうリスクが大きくなります。

実際に上司のパワハラが問題となるケースでは、それ以前からコミュニケーション不足などにより部下との信頼関係が築けていなかったり、普段から部下に信頼されていなかったりすることがほとんどです。

部下との信頼関係を築くには、部下に対して日頃から、進んで挨拶をする、ちょっとしたことでも感謝・ねぎらい・いたわりの言葉をかける、話をよく聞いて気持ちを受け止める、認める、共感するなど肯定的な態度で関わることを心がけるようにしましょう。

信頼関係は、こうした肯定的な関わりの積み重ねの上に築かれていくものです。

 

 

以上、パワハラにならない部下指導のための5つのポイントはいかがでしたでしょうか?

最後になりますが、完璧なコミュニケーション能力をもつ人はどこにもおらず、誰でも失敗することはあります。
ついきつく言い過ぎてしまったり、意図せず相手を傷つけてしまったりした場合はそのままにせず、素直に謝り、相手を気遣う誠実な態度も忘れないようにしましょう。

 

 

東京メンタルヘルス株式会社
公認心理師
シニア産業カウンセラー
綾部和幸

●関連情報
※当社ハラスメント防止研修についてのご案内は研修ページをご参照下さい。

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