チャットカウンセリングを活用し、社内のメンタルサポート体制を強化しよう

2020年02月5日

【チャットカウンセリングとは】

チャットカウンセリングとは、LINE やTwitter、Facebook等のSNSのダイレクトメッセージを使ってカウンセラーに相談するカウンセリングの形態です。リアルタイムで文字によりカウンセラーと会話ができ、「オンラインカウンセリング」の一つです。

携帯やパソコンから相談できるほか、単語や長文だけでなく、絵文字やスタンプ、写真等も送れるので、カウンセラーに詳しい情報を届けることが可能です。話すのが苦手な人でも、文字ならカウンセラーに相談しやすいということもあり、利便性が高いのが特徴です。カウンセラーの守秘義務は徹底されていますし、チャットサービスを提供する企業のセキュリティー品質は厳しく、安全性も担保されています。

また、カウンセラーからの情報や、心理状態が良くなっていく経緯も文字で残るため、後々見直し、自分を励まし立て直すことに役立てることもできます。カウンセラーと対面する必要がないので、相談室に緊張しながら入るプレッシャーもなく、初めて相談するツールとしては、最適ではないかと感じています。

更に、国内だけでなく、海外赴任者とも手軽にカウンセリングを実施することができます。相談以外にも、海外赴任者の心身の状態も確認でき、赴任者も日本との繋がりを実感できますので、海外生活の孤独感も薄れ、メンタルヘルスを保つことに貢献もできます。
こういった理由から、チャットカウンセリングは社会に普及しつつあるのです。

 

【ハラスメントとリアルな世界】

企業側がどんなに気をつけても、従業員からのハラスメントの訴えはなかなかゼロにはならず、訴えた本人も不満が解消されないのが現実ではないでしょうか。不満が解消されないことで、本人の退職を招くばかりか、労使トラブルに発展してしまうといった例も少なくありません。

最も頭を悩ませるのは、インターネット上に書き込みされ、更に拡散されてしまうことではないでしょうか? ハラスメントを訴えた社員が書き込みするだけでなく、日頃は清廉潔白に見える従業員も、ネット上では炎上を招く発言をしていたり、SNS上で自分自身を過剰にさらけ出し、アピールしていたりすることは珍しくありません。
つまり、ネットの世界はリアルな世界とは違い、つい本音が出やすいということです。そして、ネットにならある程度何を書いてもいいと錯覚させる力があるようです。

 

そういった特徴から、チャットカウンセリングは、不満を持っている従業員にとっても、非常に敷居が低く、良い意味での不満のはけ口ともなるでしょう。コミュニケーション技術に精通したカウンセラーとのチャットカウンセリングを通じて、現実的な世界とうまく向き合う一助となればと思っています。

 

【厚労省の自殺対策にも利用されている】

厚生労働省は「自殺対策白書」を毎年発表しています。令和元年版は「平成30年3月に、自殺防止を目的としたSNSを活用した相談事業(以下、「自殺防止SNS相談事業」)を開始した」とありますが、自殺だけでなく、様々な悩みをSNS相談が受け止める結果となりました。

白書によると、相談延べ件数は22,725件で、LINEによる友だち登録数は57,978件に上りました。

厚生労働省で行うメール相談、電話相談とは委託団体数の違い等もあり、件数で比較はできませんが、SNS相談は初年度の施策にもかかわらず多くの人が利用したことがわかりました。

またLINEに限っても、LINE相談全体での相談件数(延べ19,412件)が、友だち登録数(57,978件)よりもかなり少なく、相談を希望しても受けられなかった方が相当数いたことが読み取れます。

もし、社内でチャットカウンセリングを利用できれば、社内をよく知るカウンセラーに従業員が相談したい時に、気軽に相談することができ、悩みの解決を早めることができます。

 

当社ならびに、当社関連NPO団体は、省庁・自治体のSNS相談事業をはじめ、企業、学校等とチャットカウンセリングサービスを実施して参りました。相談者が自分の悩みや問題に自発的に取り組もうと、相談を始めること自体、改善に向かっているといえます。「相談してみようかな」と思う気持ちを実行に移しやすいことが、チャットカウンセリングの最大の利点といえるでしょう。

 

今後、ネットの普及と共に、更に広くチャットカウンセリングは普及していくことでしょう。
従業員や学生への支援ツールのひとつとして、時代が求めているチャットカウンセリングをご検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

一般社団法人全国SNSカウンセリング協議会 認定SNSカウンセラー
特定非営利活動法人 東京メンタルヘルス・スクエア
「こころのほっとチャット」スーパーバイザー
大阪商工会議所 メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種
国家資格 キャリアコンサルタント
一般社団法人全国心理連合会 上級プロフェッショナル心理カウンセラー
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 シニア産業カウンセラー

賀澤 美樹

 

 

【関連情報】
●「東京メンタルヘルス・スクエア」では「SNSほっとライン」として、
 LINEを利用したSNS相談を無料で受付けています。
 詳細はこちら⇒http://www.npo-tms.or.jp/service/sns.html

●当社東京メンタルヘルスでは、学校・教育機関向けSNS相談(チャットカウンセリング)も
 サポートしております。詳細はこちらをご覧ください。
 また一般企業向けに、SNS相談(チャットカウンセリング)を活用した、
 「社外相談窓口」サービスもご用意しております。
 ご用命については、当社サイト「お問い合わせ」ページより、お気軽にお問い合わせ下さいませ。

自分を振り返ること(セルフモニタリング)の大切さ

2019年09月27日

●うつ病は本当に突然発症するの?

 

厚生労働省のデータによると、うつ病など気分障害の患者数は年々増加傾向で、現在は100万人を超えています。精神疾患者数が390万人ですから、精神疾患全体の4分の1以上を占めていることになり、その多さを物語っていると思います。

私は現在、埼玉県のあるクリニックで、うつ病等によって休職している人が職場復帰できるように支援するためのグループ・プログラム『リワーク』を行っています。

利用者さんたちにうつ病を発症したときの話を聞くと、「ある日突然、ベッドから立ち上がれなくなり…」「あるとき、急に身体のふんばりがきかなくなって、会社に行こうと思っても身体が動かなくなって…」という話をよくうかがいます。

うつ病の発症は本当に何の前触れもなく「突然」「急に」起こってしまうものなのでしょうか?

 

●ストレスに対する反応のプロセス

 

うつ病は何らかのストレスがきっかけとなって発症します。ストレスに直面すると、まずショック反応が見られます。落ち込んだり、不安になったり、イラっとしたり…。その後、ストレスに対処するために、抵抗反応を示します。このとき一時的に身体機能やパフォーマンスは向上するのですが、これは言わばストレスに抵抗するために無理をしている状態です。

短い期間の中で対処して問題解決されれば大丈夫なのですが、ストレス状態が長く続いてしまうと、無理した影響で次第に疲弊していきます。これを疲憊(ひはい)期というのですが、身体機能やパフォーマンスが徐々に下がっていくといった反応が見られます。

 

急激にお腹が痛くなる、激しく緊張するといった急性ストレス反応であれば、誰しも気づけるのですが、徐々に不満や疲労が溜まっていくような慢性ストレス反応は非常に気づきにくいものです。

それに加えて、「これくらい大したことない」「みんなも大変だからこんなことくらいで…」「迷惑をかけたくない」といった思いから、身体や心のちょっとした不調のサインを見逃してしまうことが少ないようです。結果として、ご本人としては、「突然」「急に」症状が現れたように感じるのでしょう。

 

●セルフ・モニタリングの大切さ

 

しかし、本当はうつ病になる前に何らかのサインが出ているはずです。

例えば「ちょっと体がだるい」「なんとなく気分が乗らない」「どうも食欲がわかない」「睡眠が浅い」「お酒やたばこが増える」など。こうしたちょっとしたサインに早く気付いてケアすることができれば、うつ病などを予防することがしやすくなります。

 

自分自身のことを振り返り、自分の状態に気づいていくことをセルフ・モニタリング(自己観察)というのですが、うつ病を予防するためにとても大切な力と言われています。

 

●お天気マークを使った振り返り方

 

例えば、体重を例に考えてみましょう。日々摂取する食物とそのエネルギー量を記録することで、食生活の改善につなげるレコーディング・ダイエットってありますよね(ウィキペディアより一部引用)。日々記録を取ることで、体重の変化やその理由を意識するため、ダイエットがしやすくなるという手法です。

 

同じように心の状態も、毎日記録を付けることでその変化に気づくことができ、心のメンテナンスに役立てることができます。

私が勤務しているクリニックでは、虹・晴れ・晴れ曇り・曇り・雨・雷雨の6つのお天気マークを使って、気分を振り返るワークを行っています。プログラムが始まるときとプログラムが終わるときの一日2回、そのときの気分に合ったお天気マークを選びます。

 

 

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例えば、「元気がいい」「調子が良い」状態なら晴れの方を、「しんどい」「調子が悪い」状態なら雨の方を、自分の基準で選びます。選んだあとに、どんな状態かコメントするのです。また、選んだお天気マークはシートに記入していき、ある程度継続すると、折れ線グラフが出来上がります。それを見ると、コンディションが上昇傾向なのか、下降傾向なのか、あるいは横ばい傾向で安定しているのか、一目瞭然というわけです。これは弊社のコンケアを活用したワークですが、セルフモニタリングを向上させるのに非常に効果的なワークです。

 

 

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●セルフ・モニタリングの効果 ~「いつもの自分」を知る~

 

最初は「割と調子が良い」「可もなく不可もなくという感じ」「普通」「ちょっと疲れている」といった端的な表現が多いのですが、続けていくと表現が豊かになり、どういう状況でどんな状態になっているのか詳しく説明できるようになります。

 

また、継続する中で「いつもの自分」という基準を知ることもとても大切です。

なぜならば「いつもと違う自分」になったときがストレスに晒されている状態だからです。この違いが分かるようになると、ストレスに早く気づけるようになり、より早いタイミングでセルフケアをすることができるようになります。そして、1つ1つのお天気マークの違いを説明できるようになると上級者。人によっては、睡眠の質が気分に影響するとか、不安があるかないかが気分を左右するとか、自分にとって大切なポイントが見えてきます。

ある患者さんは、最初は『晴れ』が「いつもの自分」と思っていたそうです。しかし、自己理解が深まる中で、不安が全くないと地に足がつかないような感じでミスが多く、逆に不安がある程度あった方がバランスをとりやすいことに気づかれました。それから『晴れ曇り』が「いつもの自分」になったそうです。

自己理解が深まってくると、「いつもの自分」の基準に変化が見られることも実はよくある話なのです。

さらにこの気づきから「不安はあってもいいんだ」と受容できたことで、心が安定していきました。

 

●セルフケアのコツ ~心の状態に合わせて過ごす~

 

また、セルフモニタリングをして、心の状態に合わせて過ごし方を選んでいくことも、セルフケアにおいてはとても大切です。

例えば、朝起きたらなんとなく体がだるくて頭が少し痛かったとします。体温を測ってみたら37.8℃。微熱という感じです。そのとき、みなさんはどう対処しますか?休むほどではないと判断して一応会社に行ったとしても、おそらくいつものように元気にテキパキ仕事をこなすというよりは、できることだけやって、なるべく早めに家に帰るのではないでしょうか?自分の体調に合わせて一日の過ごし方をある程度コントロールすると思います。

ある患者さんは、子どもと関わる仕事をしていました。子どもたちは元気いっぱいなので、子どもたちに合わせて笑顔で元気よく仕事をされていたそうです。体調がよくなかったり、しんどいときも無理をして常に全力で働いていました。ところが心が『晴れ』のときは普通にできることも、『雨』のときに同じようにやろうとすると、とてもしんどいと感じることがあります。セルフモニタリングを通してそのことを実感され、『雨』のコンディションにあった過ごし方をするように心がけたそうです。

「いつも全力じゃなくていい」「今の自分にできることをやればいいんだ」と思うことで心が軽くなったそうです。

 

●最後に…

 

このように、
①心の状態を振り返って、「いつもと違う自分」に早く気づいて、セルフケアを行う。
②自己理解を深めて、心の状態に合わせた過ごし方を選ぶ。

 

この2つを意識すると、良い心の状態で過ごせることが増えていくと思います。セルフモニタリングを習慣に取り入れて、心身の健康を良い状態に保てるよう心がけてみてはいかがでしょうか。

東京メンタルヘルス
公認心理師・臨床心理士 山本立樹

●関連情報
・本コラムにてご紹介した、コンディションマネジメントサービス「コンケア」のサービス詳細は、
 こちらをご覧ください。
・学校,教育機関向けの「スクールコンケア」のサービス詳細は、こちらをご覧ください。

パワハラにならない部下指導のための5つのポイント

2019年09月11日

パワハラ・パワーハラスメント

 

今年5月に改正労働施策総合推進法(通称 パワハラ防止法)が可決・成立し、いよいよ来春以降、企業に対し、パワーハラスメント(以下、パワハラ)の防止措置を講じる義務が課されることになりました。

パワハラは働く人のメンタルヘルスを悪化させ、仕事への意欲や活力の低下を引き起こす重大な問題です。
パワハラをなくすにはどうしたらよいか、誰もがいきいきと働ける環境をつくり職場の活力と生産性を高めるため、職場のパワハラ防止に積極的に取り組んでいくことが、今、強く求められつつあるといえるでしょう。

さて、パワハラには様々なものがありますが、中でも多いのは上司が部下に対してパワハラの加害者となってしまうケースです。
そしてそのような場合、いちばん問題になりやすいのが「指導とパワハラの違い」です。

管理職を対象としたパワハラ防止研修においても、受講者にとってもっとも悩ましいのは部下への指導の仕方に関することであり、「どこまでが指導でどこからがパワハラになるのか?」、「何度言っても分からない部下はどう指導したらよいのか?」といった疑問の声や、「ちょっと強く注意しただけでパワハラだと言われたら怖くて部下指導などできない」といった困惑の声が多く聞かれます。

そこで今回は、上司が部下を指導する上で、うっかりパワハラの加害者になってしまわないためにはどのようなことに注意すればよいか、そのポイントを5つ紹介したいと思います。

 

 

1. 指導とパワハラの違いを理解する。

指導とは、行動の改善や内面的な成長など、相手によい変化を促そうとする働きかけです。
その働きかけは、相手に伝えたいことをよく理解させたり、どうしたらよいかを考えさせたりするため冷静かつ穏やかになされ、そこには自ずと、相手の気持ち、やる気や主体性を大切にするような配慮が存在しています。

一方、パワハラの場合には、上司はたとえ指導のつもりであっても、その働きかけは感情的、一方的なものであり、相手が今どう感じているか、相手の気持ちに対する配慮は忘れられています。

部下を指導する時は、何のために指導するのかをよく理解し、冷静かつ穏やかに、相手の気持ちを考えながら働きかけることを忘れないようにしましょう。

 

 

2. 自分の感情に注意を払う。

指導のつもりがパワハラになってしまうのは、そこに怒りの感情が入り込んでくる時です。
怒りの感情が強くなるほど冷静さや穏やかさを保つことが難しくなり、相手の気持ちを察する余裕も失われ、それがパワハラにつながっていきます。

したがって部下を指導する時は、まず、自分の中に怒りの感情がないかどうか確認することが大切です。
そしてもし怒りの感情がある時は、気持ちを切り替えて冷静になることを優先し、落ち着いてから指導するようにしましょう。

人が怒りの感情をもつのは自然なことであり、それ自体が悪いわけではありませんが、怒りの感情をもつことと、それを相手にぶつけることは異なるということを、よく理解する必要があります。

また、怒りの感情を無理に抑え込んだり消し去ろうとしたりする必要はありません。
むしろ、怒りの感情を何とかしようとするほど、そこに強く注意が向いてしまい、怒りの感情から離れることがいっそう難しくなります。
自分の中に怒りの感情があることに気づき、それを認めた上で、ただ気持ちを切り替えればよいのです。

気持ちを切り替えるには、それ以上考えるのをやめる、深呼吸をする、ゆっくり10まで数える、その場からいったん離れるなど様々な方法がありますが、気持ちを切り替えるにはどうするのが有効か、自分に合ったやり方をいろいろ試してみるとよいでしょう。

いずれにしても、怒りの衝動はそう長く続くものではありません。
一呼吸おいて、衝動のままに行動することを控えるだけで、怒りの衝動は時間の経過と共に自ずと弱まっていくはずです。

 

 

3. どうして欲しいかを素直に伝える。

パワハラをしやすい上司に共通するのは、「何で?」、「どうして?」と質問しながら相手を責め、追い詰めるやり方です。

「何でできないんだ?」、「どうしてやらないんだ?」、「何度言ったら分かるんだ?」といった問いかけは、部下にとって非常に答えづらいものです。
それは何か答えても、「言い訳するな」などと、また言い返されてしまうからです。
それを見越して先回りして謝ったとしても、「謝れば済むと思ってるのか?」などと言い返され、どう答えても否定されるため何も言えず黙っていれば、それもまた、「黙ってないで何とか言え」などと責められます。

結局、こうした問いかけは質問の形を装った怒りの表現であり、部下がどう答えようと、上司の怒りが収まるまで延々と続きます。
そして部下はどうすることもできず、ただ責められ続けるしかないのです。

もし部下に対して、「何で?」、「どうして?」と責めたくなった時は、本当は相手にどうして欲しいと思っているのか、何を伝えたいのか、よく考えてみることが大切です。

たとえば、「何でできないんだ?」というのは、実はできない理由を知りたいわけでなく、本当に伝えたいのは、「これはちゃんとできるようになってもらわないと困る。だからできるようになって欲しい」という思いであるはずです。

そうであれば、最初から「こうして欲しい」と素直に伝えた方が相手にも分かりやすく、「では、そのためにはどうすればよいのか?」と、建設的な指導や話し合いもしやすくなるでしょう。

 

 

4. 指導の仕方を工夫する。

「何度言っても分からない部下はどう指導したらよいのか?」という問いの背後には、指導とは口で言って聞かせるもの、説明して分からせるものだという思い込みが潜んでいます。

そうした思い込みがあると、「分かるまで何度でも言い続けるしかない」、「もっと強く言うしかない」、「言って分からなければ痛みを与えて分からせるしかない」と次第にエスカレートし、それがやがてパワハラへとつながっていきます。

言って聞かせる、説明して分からせることだけが指導ではありません。
「何度言っても分からない」のであれば同じやり方に固執せず、部下の能力や特性なども考慮しながら他のやり方を工夫し、試してみましょう。

「何度言っても分からない」と、できないことを部下のせいにするのでなく、「どうすればできるようになるか?」を考え工夫し、働きかけることが上司の仕事でもあるはずです。

「何度言っても分からない」と嘆く前に、次の3点を確認してみるとよいでしょう。
① その問題について、なぜそうなっているか、どうしたら改善できるかを部下とよく話し合い、
  共に考える時間を充分にとったか?
② 部下の話をよく聞いて、部下の状況や気持ちを充分に把握・理解できているか?
③ その問題をどのように見立て、改善を図るためにどのような指導の工夫をしたか?

 

 

5. 信頼関係を築く。

パワハラ防止には、日頃から部下との間にしっかり信頼関係を築いておくことも大切です。

信頼関係があれば、それだけ意思の疎通が図りやすいためパワハラは起きにくく、逆に信頼関係がないと、ちょっとしたコミュニケーションの齟齬が強い不快感をもたらし、たとえ悪意のない言動であってもハラスメントと受け取られてしまうリスクが大きくなります。

実際に上司のパワハラが問題となるケースでは、それ以前からコミュニケーション不足などにより部下との信頼関係が築けていなかったり、普段から部下に信頼されていなかったりすることがほとんどです。

部下との信頼関係を築くには、部下に対して日頃から、進んで挨拶をする、ちょっとしたことでも感謝・ねぎらい・いたわりの言葉をかける、話をよく聞いて気持ちを受け止める、認める、共感するなど肯定的な態度で関わることを心がけるようにしましょう。

信頼関係は、こうした肯定的な関わりの積み重ねの上に築かれていくものです。

 

 

以上、パワハラにならない部下指導のための5つのポイントはいかがでしたでしょうか?

最後になりますが、完璧なコミュニケーション能力をもつ人はどこにもおらず、誰でも失敗することはあります。
ついきつく言い過ぎてしまったり、意図せず相手を傷つけてしまったりした場合はそのままにせず、素直に謝り、相手を気遣う誠実な態度も忘れないようにしましょう。

 

 

東京メンタルヘルス株式会社
公認心理師
シニア産業カウンセラー
綾部和幸

●関連情報
※当社ハラスメント防止研修についてのご案内は研修ページをご参照下さい。

仕事で役立つ! カウンセラーが教える、マインドフルネス概論とその手法

2019年09月4日

近年、マインドフルネスという言葉が世界的に認知されてきています。国際的な企業であるGoogleやAppleでも取り入れられたりするほど、その効果が注目されています。

私自身も臨床の現場においてマインドフルネスの実践指導をすることがあります。クライアントのエピソードや出来事に合わせて、その場で一緒に取り組むのですが、

マインドフルネスの考え方が理解できるだけで視野が広くなったり、実戦練習に取り組むことで自分の考え方や気持ちの変容に気付かれる方が多くいらっしゃいます。

 

それに加え、マインドフルネスは仏教の考えを元にしているのですが、宗教色が排除され誰でも取り組めるものとなっています。実際のやり方や考え方のほか、それをどのようにして日常生活で応用するかをご説明していきたいと思います。

 

■マインドフルネスの意味と目的

マインドフルネスには、「今に意識を向けて価値判断を加えず眺めること」「自分の気持ちや感覚を感じている心理状態」などの意味がありますが、もう少し身近な言葉で言うと、

「自分の考えや気持ちと距離をうまく取る」

という風に認識してもいいと思います。人は、目の前の出来事に意識を向けすぎると、周りが見えなくなったり、視野が狭くなって考えが固くなってしまいます。そこから、今の自分の状態に焦点をあわせることで物事を冷静に見られるようになるのが、マインドフルネスの目指すところになります。

 

■マインドフルネスの効果

マインドフルネスの状態になると、以下のような効果を感じることができます。

・自分や物事を客観的に見る事が出来る
・人から言われた事に振り回されにくくなる
・集中力改善
・身体のリラックス効果 etc.

このようにマインドフルネスになると、

物の見方が変わり、自分に対して客観的な視点を手に入れることが出来るので、冷静に物事を考えることが出来る様になります。

その結果、こころがリラックスすることで緊張や不安が減り、体にも良い影響が起こります。

 

■マインドフルネス瞑想について

マインドフルネスになるための取組みの一つに、マインドフルネス瞑想があります。マインドフルネス瞑想では、自分の考えたことや勝手に湧き上がってくる思考や雑念を、意識的に観察するという手法が行われます。いろいろなやり方がありますが、以下の方法が一般的に行われる練習の手順になります。

1. 椅子に座る、あるいは床に胡坐をかいて、目をつむります。
2. そのまま自分の呼吸や呼吸によって動くお腹に意識を向け続けます。
  この状態を最初は5分ほど取り組んでいきます。
3. すると、雑念や考え、または過去や未来のことなど何かしらの思考が、段々勝手に頭に浮かんできます。
4. その湧き上がってきたものを意識でキャッチするかのように捉えます。
5. 捉えられたら、2.に戻って同様に取り組み、3.4.5.の一連の手順を進めます。(以下、繰り返し)
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呼吸等への意識にとても集中できている方はなかなか雑念が出てこない場合がありますので、その際は取り組む時間を増やして雑念等が出てくるまで行うのがお勧めです。

この練習の目的であり、大事なポイントともいえるのは、無意識に考えてしまう思考や雑念に自分で気付けるかどうか、また、そのように考えてしまう自分というものを発見できるかどうかにあります。

発見することが出来れば、先ほどの手順2.のように、発見した自分を一旦どこかに置いて、自身の呼吸やそれによって動くお腹に意識を向ける動作に戻ります。この一連の手順を繰り返すことで、意識をコントロールする練習になります。

 

■日常生活での応用

このような活動を取り組んでいくことで、マインドフルネスな状態や感覚など様々なことを得られると思いますが、それをどうすれば日常生活で応用できるかをご説明したいと思います。

例えば、職場においてストレスの原因となっている同僚がいる場面を取り上げてみます。

【状況】:Aさんの同僚が近くでブツブツ何かを話している。
〈Aさん〉:「あの人、何を言っているんだろう?たまにあんなふうにブツブツいっているよなー。何か言いたいことがあるならはっきり言えばいいのになー。え、もしかして自分のことで、なにか言っているんじゃないか? だとしたら嫌だな。そういえば前に自分の変な評判を聞いたことあるけど、もしかしてあの人が言ったんじゃ? どうしよう。。。ちょっと怖くなってきた。。。」

Aさんを自分だと思って、想像してみてください。実際にこの同僚が何をしていたかは分かりませんが、Aさんは頭の中で様々な想像をしてしまいます。このような状況があった時、まずは同僚に対してどんなことを考えたか、またどんな感情を抱いたかをAさんは冷静にその場で振り返る必要があります。実際の場面でそれを実践するのはやや大変ですが、このように文面にしてあると分かりやすくなるはずです。最初は、起きたことを書き出してでもいいので、自分がその時考えたこと、感じたことを振り返ってみましょう。
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そしてその振り返りが出来たら、

「どこから考えや思考が生起して、それがその後どのように連想していったか」

を考えます。それに加え「Aさんの感情はどの時点から発生したか、または強くなっていったか」ということも考えてみましょう。Aさんは同僚の事が気になってくるにつれ、自分への被害について考え始めています。その結果、同僚に対する負の気持ちが芽生え始め、良からぬ想像をして、不安や疑いの感情を持ち始めました。
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思考の連想は、進めば進むほど加速していき止めにくくなっていきます。

それをストップさせるには最初の時点で気付くことが大事です。

しかし、Aさんは結局、様々なことを想像して自分で自分を不安にさせています。自分の思考が同僚に向き始めていることや想像が進んで不安になっていることに、自分で気付くことが本来は大切なのですが、疑問や不安が先行してしまい、それをすることが出来ていません。もしここで、自分の考えていることや感じていることを客観的に観察して、マインドフルネスな状態に持っていくことが出来れば、余計な考えを途中で辞めることができ、ストレスの根源となる負の感情の蓄積を防ぐことが出来ます。

 

■コツコツやること

このように、マインドフルネスは実際の生活場面で応用することが出来ます。

定義や考え方をしっかり頭にインプットすることが出来ればいいのですが、これはある種の心の筋トレなので、何度も意識して取り組むことで頭に定着していきます。

また瞑想のほかにも、マインドフルネスの練習方法は様々あります。自分に合ったものを選択し、少しずつ日常でも取り組んでみては、いかがしょうか?

 

 

【本コラムのポイント】
・マインドフルネスでは、「自分の考えや気持ちと距離をうまく取る」ことが大変重要。今の自分の状態に焦点をあわせることで、冷静に物事を見られるようになることが、マインドフルネスの目指すところ。

・普段の生活でのマインドフルネスの応用として、ストレスの原因に遭遇した際、最初は書き出してでもいいので、自分がその時どんなことを考え、どんな感情を抱いたかを振り返ってみる。その振り返りが出来たら、「どこから考えや思考が生起して、それがその後どのように連想していったか」を考える。これにより、余計な考えが途中で辞められ、ストレスの根源となる負の感情の蓄積を防ぐことが出来る。

・思考の連想は、進めば進むほど加速し、止めにくくなっていくので、最初の時点で気付くことが大事。

・マインドフルネスはある種の心の筋トレ。何度も意識して取り組むことで頭に定着していく。

 

 

東京メンタルヘルス
臨床心理士
宮碕景悟

●関連情報
※当社マインドフルネス研修についてのご案内は研修ページ[スキルアップ・テーマ別研修]をご参照下さい。

令和最新! ハラスメント問題の傾向とは
~職場のセクハラ問題を中心に~

2019年07月11日

ハラスメント

職場のハラスメント問題、最近では“Me too”運動の流れもあり、多くの方が気になっていることと思います。また2019年6月、国際労働機関ILOでも、ハラスメントに特化した初めての労働基準が条約として採択されました。
これは契約上の労働者だけでなく、実習生や採用応募をしようとしている状態も含め、女性に限らず全ての人を職場でのハラスメントから保護しよう、というものです。残念ながら日本はまだこの条約に批准していませんが、日本だけでは経済が成り立たないのですから、批准していないからOKということにはならないでしょう。

ところで、私が担当したハラスメント研修でも、気になる女性に声をかけたいけれど、いったいどこからがセクハラになるのでしょうか、といった質問をよく頂きます。
(業務外のお誘いで、どこからがセクハラになるのか…答えと解説は後半に)

こちらが好意を持っていても、相手も同じとは限りませんよね。
それに、勇気を出して嫌だと断っても「嫌よ嫌よも好きのうち」と意に介さない人もいれば、そもそも断れない相手だからこそ、我慢している内にエスカレートしていく被害もあるでしょう。
まずは言われた側、された側が「嫌です」と声を上げる事も大事ですが、相手がそもそもノーなんて言えない関係(あるいは言ったら何か不利になるのでは、と思っている状況も含めて)だからこそ話がこじれている場合もありますので、職場での言動には充分な配慮が必要です。

セクハラ認定がこわいから…といって、女性には声をかけずに男性だけでグループができてしまうと、グループから外れた女性だけ情報が入ってこなくなるなど、例え相手に良かれと思っていても情報格差ができてしまったり、過剰な配慮がトラブルの原因になることも多いです。
またこれは、男女間だけでなく、仕事後のお酒の付き合いに対応できない事情を抱えた男性にとっても起こりえる話です。

多様性という考え方も広がりつつありますが、従来のような大卒・男性・正社員で、滅私奉公のような労働に対応できるメンバーだけが過剰に重宝される状態では、これからの人手不足や、育児・介護をはじめとした従業員のライフイベントの発生などの様々な場面に対応しきれなくなります。

また今は遅くまでの残業に対応できたとしても、65歳の定年まで、怪我も病気も介護の心配もなくバリバリ働ける、という方は少ないでしょう。
定年後の再雇用で正社員でなくなったら、同じ仕事なのに待遇が大幅に低下する、という現象も正社員偏重の裏返しな訳ですから、多様な働き方への対応はどのような状態でも働き続けるための布石ともなるでしょう。

 

■ハラスメントって、どうやって決めるの?

ところで、ハラスメントとは「嫌に思うこと」、だから相手が嫌かどうかで勝手にハラスメント認定されてしまうのでは、これじゃ言ったもん勝ちじゃないか、と過剰に恐れている方も多いと思います。
同じホメ言葉をかけても、「但しイケメンに限る」なんてセクハラ扱いされたら身もフタもない、と思った方もいらっしゃるのでは?
日本ではまだなじみが薄いかもしれませんが、人種問題に敏感な海外では、本人の努力で変えられない容姿や身体的特徴については、そもそも誉め言葉であってもNGとなっています。

相手の気持ちを思いやることももちろん大事ですが、最近では、相手がどう感じたか、というあいまいな基準よりも事実の段階でハラスメントを特定しようという流れが起きています。
例えばマタニティ・ハラスメント(マタハラ)でも、本来使えるはずの制度の活用を妨害することそのものが、相手の感情に関係なくハラスメントである、と法律でも規定されるようになりました。

また、大学や研究機関でのアカデミック・ハラスメント(アカハラ)においても、研究と結婚の二択を迫ったり、指導教員が学生の論文を無断引用すること、単位認定の成績開示に応対しないことなど、事実そのものでハラスメント認定し、実例を挙げてガイドラインで公表している大学もあり、感情論だけではないハラスメント問題の扱いがされてきています。

昨今の過剰なハラスメント意識の高まりで、適切な範囲の指導でさえ被害者意識によってハラスメントと訴えられ、現場が混乱しているケースもちらほら見受けられます。
(ハラスメントの過剰主張によるハラスメント、ハラ・ハラなんて言ってる方もいますね)
上司や指導者にとって適切な指導がしづらくなってしまう環境では、指導される側も、今後の成長の機会を失う原因にもつながります。感情的に被害を訴える前に、まずは一旦、なぜそのような言動がなされたのか、どう指摘されたら良かったのか、落ち着いて考えてから行動する必要があります。

こういったときは、ひとりで考えていても煮詰まってしまいますので、利害関係のない外部専門カウンセラーに相談したり、専門家としての知識やアドバイスをもらうなど、第三者の助けを借りるのも有効な手段です。

 

■職場のセクハラ

職場のセクハラというと、男性から女性、上司から部下、といったパターンがすぐに思い浮かびますが、同性間でも起こりえます。男性の上司が男性の部下を、望まないのに女性が接待する所へ連れて行ったり、先輩女性が後輩女性にプライベートな内容や、出産に関連して性生活の話を根掘り葉掘り聞きだす…等々。
同性間だからこそ相手に自覚がなかったとしても、仕事に関係のない言動で嫌な思いをして、転職を余儀なくされるケースも起きています。

例え悪意がなくても、上司や先輩といった立場があるだけで相手は断りづらくなっています。自分がされて嫌な事はしない、自分が良くても相手が嫌ならしない。相手がもし会社の偉い人だったり、恋人や身内だったらできないような言動は控えた方が良いでしょう。

 

~★ 職場の気になるあの人をお茶や食事に誘いたいけど、どこからがセクハラ? ★~

 

(答え)相手に自由に断る余地があるか、で判断してください。

相手が自由に断れない状況では、例え言葉でOKされて食事などの席に同席していたとしても、心の底から納得しているかどうか判断できません。そのような場合は、業務外の誘い自体がハラスメントと思われる可能性がありますので、こちらから誘うこと自体を考え直した方が良いでしょう。

もし自分の誘いを断ったとしても、あとで評価や雇用、人間関係などで何も不利にならない、と相手が安心できて、自由な選択ができる状況か、よ~く考えてみてくださいね。
上司の誘いを断ったら、その後の評定や給与、不機嫌にさせて仕事に影響するかも…なんて考えたらなかなか断れないですよね。内心では不本意でも、機嫌をそこねないように食事や飲みについて行くでしょう。男性から女性だけでなく、女性の管理職から男性部下へのお誘いでも同様です。

一緒に飲みながら好き放題に会話ができて、楽しいのは自分だけになっていませんか?
年齢やキャリアを重ねたら、相手の言葉だけでなく顔色も確認するなど、相手に無理をさせていないか気を配る必要がありますね。

 

東京メンタルヘルス株式会社

産業カウンセラー

ハラスメント防止コンサルタント

花岡かをり

 

●関連情報
※当社ハラスメント研修についてのご案内は研修ページをご参照下さい。

次世代EAPの姿とは?

2019年05月2日

ストレスチェックが法制化されて3年を超え、
健康経営やポジティブメンタルヘルスに関連したご相談をいただく機会が増えてきました。
メンタルヘルスに対してネガティブなイメージが今なお根強いところはありますが、
ほんの数年前まで、二次・三次予防のサービスが事業の大半だったことを考えると、
時代の流れの変化を強く感じます。

コミュニケーション環境も、近年、めまぐるしい変化を遂げています。
ある調査(※)では、ネットユーザーに占めるLINEの利用率が、
2018年末で80%を超えたそうです。
2011年に誕生して10年も経っていないわけですから、本当に驚くばかりですね。
【※「2018年度SNS利用動向に関する調査」(ICT総研)】

あらためて言うまでもないことですが、今やLINEは、メールや電話にとって代わって、
若い世代のコミュニケーションの中心を担うツールとなっています。

メンタルヘルスの理解が進み、コミュニケーション環境が大きく様変わりするなかで、
EAPサービスもまた、進化させていかなければなりません。
次世代のEAPにふさわしい姿とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

弊社では、EAPサービスを「教育」「相談」「見守り」「復職」の4つの柱に
カテゴライズしていますが、今回はそのうちの2つ、「相談」「見守り」について、
現在そしてこれからの取り組みをお伝えできればと思います。

 

●「相談」:“待つ”カウンセリングから“後押し”するカウンセリングへ。悩みを長引かせない取り組み。

 

まずは「相談」からお話しします。

状態が悪化してしまってから、カウンセリングを利用されるケースが、
今なお多い傾向にあります。「このままだとしんどくなってしまいそうだな」と感じた時に、
外部に相談できていれば、それだけご本人の復調も早まるのですが、
いざ外部の相談機関を利用するとなると、緊張や抵抗感が生じてしまうのではないでしょうか。
友人や家族に悩みを打ち明けるとしても、頻繁に時間を作ってもらうことは、
気兼ねもあって難しいかと思います。

カウンセラーへの来談や電話相談それぞれに長所がありますが、
例えば、喫茶店や電車の中といったスキマ時間や、帰宅後のリラックスした時間に
気軽に利用できるような相談サービスを提供する意義は大きいものと考えます。

そうした意味でも、SNSやチャットは、まさにうってつけのツールでしょう。
これらのツールを通じて、カウンセラーと一度コンタクトが取れていれば、
電話や対面相談にも抵抗が少なくなってくると感じていますし、
相談するエネルギーが落ちてしまう前に、こちら側から背中を押してあげることも可能です。

現在弊社では、自殺対策やいじめ対策など、官庁・自治体の
SNS相談(チャットカウンセリング)事業を多数受託しています。
このコラムを書いているまさに今も、寄せられた多くのご相談の対応に
SNSカウンセラーの皆さんが奮闘しています。

また企業・学校向けに、社外相談窓口の次世代型サービスとして、
気楽にグチを吐きだしてもらうチャット相談サービスを提供しています。
カウンセラー側にとっては、電話や対面相談に比べると、
テキストを読み取る作業が非常に大変なのですが、利用の気軽さや利便性を支持しています。

 

●「見守り」:負担をかけず、時間や場所も選ばない、従業員の見守りを実現

 

15年以上ストレスチェックサービスを実施してきた経験から申し上げると、
年に1回のストレスチェックは、従業員のメンタルをサポートするにはとても不十分です。
結果に全く問題が無かったにもかかわらず、受検した数か月後にメンタル不調で
離職や休職したといった事例を、数多く耳にして参りました。

弊社では、メンタル状態を気分で表すお天気マークで毎日チェックして勤怠と
連動させることで、従業員の見守りを手間なく実施できる
「コンケア(コンディションケア)」というHRサービスを提供しています。
クラウドサービスですので、時間や場所を選ばず見守ることが可能です。

昨年5月には、NHKのクローズアップ現代で、コンケアを共同開発した
株式会社エクスブレーンの石田社長が出演され、開発経緯や実績も紹介されました。

コンケアでは、特許を取得した技術により「いつもと違う」状態をいち早く発見、
相談ダイヤルやチャット相談の利用を案内するだけでなく、その時々の気分の状態に
応じた教育動画の閲覧を促すサポートも行っています。
そのため、弊社が提供しているサービスのなかで、このコンケアは最も一次予防に
特化したサービスといえるでしょう。

適切な見守りが出来ていると、初動対応としての早期発見・早期支援もスムーズに
行うことができます。おかげさまで多くのお客様から、ストレスチェックでカバーできない、
従業員の日々のメンタルサポートにお役立て頂いています。

 

●最後に

 

私は、カウンセラーとして対面相談と電話相談に長く携わっていますが、目の前の
クライアントが何を求めているのか、その支援で何がベストかを常に模索しています。

時代のニーズに応じたEAPサービスを世に送り出していくことはもちろんですが、
「ピンチをチャンスに」という言葉にある通り、「喜怒哀楽の波」に気づき、
その乗り越え方を身につけていただく支援を通じて、
その方にとっての成長に貢献していきたいと考えています。

東京メンタルヘルス株式会社
専務取締役兼法人事業部長
武藤 収

●関連情報
・東京メンタルヘルスの企業, 団体向けの外部相談窓口サービスでは、
 オプションサービスとして、SNS相談(チャットカウンセリング)がございます。
 詳しくはお気軽にお問い合わせ下さい。⇒お問い合わせはこちら
・学校, 教育機関向けのSNS相談(チャットカウンセリング)サービスはこちら

「コンケア」がNHK2番組に紹介されました。

2018年05月19日

【番組レビュー】

当社サービス「職場のコンディションマネジメントサービス『コンケア』」が、
NHK「クローズアップ現代+」(5/10)、NHKニュース「おはよう日本」(5/11)に、
それぞれ取り上げられました。

 

約1年ぶりのテレビ取材となる今回は、NHK2番組出演ということで、
コンケア始まって以来、初めての地上波全国放送での出演となりました。

 

「クローズアップ現代+」では、

「五月病」をテーマに、お笑い芸人でIT企業役員の厚切りジェイソンさんや、
漫画家の田中圭一さん(「うつヌケ」作者)らの出演者を交えて、
五月病のメカニズムや体験談、その乗り越え方などを分かりやすく伝えていました。

※番組全体の文字起こしが番組HPにアップされています。リアルタイムで見逃した方はぜひご覧ください。
詳細はこちら⇒http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4127/index.html

01

番組中盤、「”五月病退社を防げ”企業の取り組み」のトピックに移ると、

(アナウンサー)
「……こちら、ご覧ください。

ITベンチャー企業では、社員一人一人の心の健康状態を把握するために、
5年前に心の天気予報というアプリを開発しました。これ、出退勤のときに必ず自分の心の状態を
6つの天気マークで会社に送るんです。その結果、上司が部下の心の状態を気にかけるようになって、
離職者も減少したということなんです。今ではこのアプリ、商品化されて60社で導入されて、
1万人以上が利用しているんです。」

 

NHKのため、社名は放送されませんでしたが、コンケアの紹介がこうしてはじまりました。

続いて、このITベンチャー企業こと、
東京メンタルヘルスと共同でコンケアを開発する、
株式会社エクスブレーンの取締役 石田さんのスカイプインタビュー。

アナウンサー、以下A:このアプリを開発されたきっかけは?

    石田さん:ひと言で申しますと、上司、管理職としての、後悔がきっかけです。
                  具体的には、自分の席から5メートルも離れていない新入社員のメンタル不調に気付けなか
                  ったということがありました。
             A:やっぱりそれは上司としても、つらい経験でした?
    石田さん:つらかったですね。自分がしっかりしていれば、クリニック等に行かなくても済んだ、自分
                  が何をしていたのかという後悔が強く残りました。
             A:企業としてメンタルヘルス不調に取り組むことの意味について、どう考えていますか?
    石田さん:今、深刻なほど、人が採用できません。採用氷河期といわれるこの時期に、会社が取るべき
                  行動は、今いる社員の方々に、安心感、安全感を持って働いてもらえるようにすることだと
                  実感しています。
                  そのためには、数字を追いかけるだけではなく、働いている方々の心をシンプルに可視化し
                  て見守っていく、小さな変化に気付く、そして予防的にフォローする仕組みを作っていく
                  ことが必要とされてきていると思います。
             A:ありがとうございました。  (一部編集)

 

テレビ初出演で、いきなり全国区デビューとなった石田さんでしたが、
終始落ち着いたご様子でのインタビューとなりました。

02

翌11日の「おはよう日本」では、

【“五月病”対策最前線!】として特集が組まれました。

五月病により、体調を崩して新入社員が出社できなくなるといった放置できない事態に、
人材不足に悩む企業が新たな対策に乗り出している、とのナレーションを皮切りに、
エクスブレーン社の社内の様子が映されると、

03

・「コンケア」の簡単な機能紹介と、「コンケア」タブレット画面のアップ
・出勤時に、タブレットの天気マークを押す社員(平野さん)のインタビュー
・雨マークが連続している部下(苫米地さん)に、上司(三友さん)が声掛けする場面
といった流れで、放送が続きました。

さらに、コンケアの開発のきっかけに話が及び、
エクスブレーン社では、かつて、精神的なことがきっかけで通院したり、
退職したりする社員が相次いでいたものの、

コンケア導入後の5年間は、離職者が1人のみに抑えられ、大幅に離職者を減らすことができた

エピソードを伝えていました。

――――(社内で)気持ちを受け取る習慣ができることで、コミュニケーションの質と量が高まり、

              完全にとはいかないが、コミュニケーションの問題が解消されていく(と考えています)

 

先のエピソードを受けて、最後は連日出演、石田さんのインタビュー映像で締め括られました。

放送後の石田さんのコメントです。
「『いつもと違う』部下に、いち早く気づき、支援を届けるための仕組みが、ひとつでも多くの企業様に
 根付くことを常々願っていましたので、今回の放送は、その想いの伝達と具体的な仕組みの訴求に
 おいて、たいへん貴重な機会をいただいたものと思っています。
 バトンをつないでいただいた東京メンタルヘルス社の皆様には、深く感謝を申し上げます。」

<コンケア紹介動画>

「LGBTは特別な存在ではない」、当事者の研修講師が今伝えたいこと

2018年04月26日

最近、新聞やテレビ、ネット記事などでも性同一性障害や同性愛など
LGBTという言葉をよく見聞きするようになったと思います。
Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシュアル、Tはトランスジェンダー
それぞれの頭文字とった性的マイノリティを表す言葉です。
先日『広辞苑』でもLGBTが取り上げられ話題になりました。

では、LGBTの人は日本でどれくらいの人数が存在すると思いますか?
調査によると全人口の5~7%(電通総研調べ、2015年)、
これは13~20人にひとりの割合になります。思っていた以上に多くはありませんか?
日本の苗字の「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」さんの合計は600万人いると言われていますが、
LGBTの総人口はその数に匹敵する規模があります。
そう考えると俄然身近に存在すると考えられますね。

TVやマスコミでは「オネェキャラ」のタレントさんが多く露出して華やかに場を盛り上げますが、
ほとんどのLGBTの方々は差別や偏見を恐れて、
地域や職場でセクマイ(セクシュアルマイノリティ)であることを隠しているのが実態です。
あなたの周りにLGBTの人がいないのではなく、
声を上げることが出来ない状況をわかっていただきたいです。

そんななか、日本でもいよいよ制度的な取組みがはじまりました。
2003年の性同一性障害の特例法、2017年の渋谷区のパートナーシップ証明書など、
これらの制度の動きが日本を少しずつ変革してゆくと思います。

東京レインボープライドも年々規模が大きくなって、
当事者だけでなく、各種有名企業・団体の協賛、有名人・アーティストが参加。
春の東京の風物詩になる勢いがあります。

企業の取組みでも、LGBTは特別ではない存在だと意識を変えて理解し、
企業全体がアライ(支援者・理解者)になることが望ましいと思います。
そのためには、企業研修、職場整備、制度の活用、差別や偏見によるトラブル回避などを駆使し、
一人でも多くの人がLGBTであることを隠さずストレスなく安心して働く、
そんな時代が来ることを祈ります。

☆東京メンタルヘルス カウンセラー/LGBT研修講師  熟田 桐子
※LGBT研修プログラム例はこちらをご参照下さい
※LGBTインタビューメディアサイト LGBTERによる、熟田のインタビュー記事はこちら

5月・6月病と人間関係

2017年06月2日

5月病とか6月病と呼ばれている病気があります。5月の連休明けから6月にかけて発症する精神障害のことです。新入社員が現場に適応できず「リアリティショック」を受け休み出したり、異動してきた職員が、仕事や職場環境に馴染めず、心身に症状を出したりすることです。

TMAの実施したストレスチェックで、最もストレスと答えている項目は「人間関係」です。「人間関係が面倒だ」「人間関係が悪い」「相手の反応が怖い」「無視されたらどうしよう」というのが、その中身です。人間関係が面倒になり、さらに深刻化すると、「ひきこもり状態」になります。ひきこもりの心境は、「もう話にならない」とか「関係を持ちたくない」「周りに対しては不信感でいっぱいだ」などです。人間関係を分析する学問に「交流分析」というのがあるのですが、この中では一番重症な状態と言われています。

人間関係の問題は、何も5月、6月に限ったことではありません。四六時中ある問題です。ただ過去に人間関係で傷つき、トラウマを持っている人は、ちょっとした刺激に対して反応するという特性を持ってしまいます。新入社員や異動してきた社員の中に、過去のトラウマがあったとするなら、周りの冷たい視線や怒鳴り声に反応しやすくなるのは当たり前のことです。

厚生労働省の労働局が窓口になって行っている労働相談では、パワハラを含むいじめ、いやがらせの相談件数が6万6000件(※平成27年度 出典:厚生労働省)を超え、急増しています。対策としては、信頼関係を形成する職場づくりを目指す必要がありますが、この問題は職場に限らず、学校や家庭、地域社会でも求められているところです。

心に傷があり、不安を抱えている人は、そうでない人に比べていじめを多く発見するという調査結果があります。つまり、それだけ過敏になっているということです。

                              東京メンタルヘルス 所長 武藤清栄

※ITmediaビジネスONLiNEの「6月病特集」にて、弊社所長の武藤がインタビュー取材を受けました。
 6月病に立ち向かうヒントとして、「毎日気分を記録するツールを使って、予防する」サービスである
 「コンケア」の他、企業のメンタルヘルス対策における注意点についてもお伝えしています。
 どうぞあわせてご覧ください。インタビュー記事はこちら

性をどう生きるか②~ノンセクシャルを生きる~

2016年08月15日

ある日、私のところに「自分は女性にモテない。これでは人生に暗雲が漂うばかりで、生きがいもない」と訴えるクライエントが来談された。
  
「モテる」とは、よく言われているように、人(異性・同性)から興味関心を持たれ、性的存在として魅力に富んでいることの意である。また性的存在とは、「会いたい」「一緒にいたい」といった愛慕の情や、「触れたい」など身体接触の欲求や期待を持たれる対象を指している。

 

このクライエントは、自分はそういった存在ではなかった、とこれまでを思い返していた。周りから求められてこなかったこと、必要とされてこなかったことが、性を生きる自信を失わせていたことに気づいていった。どうせ自分はモテないという思い込みが、異性に対して働きかける気力を低下させていたようである。

 

「あなたの人生にはどのような性が憑りついているのですか」とさらに投げかけてみると、クライエントは性に関する不快な体験を山ほどあげつらった。性に対して心や身体で反応する能力や、性的な喜びを体験する能力をすっかり抑圧・抑制しあきらめていたのである。言うならば性のうつ病にかかっていたとでもいったところだろうか。

 
逆説に真理ありで「性を無視して生きてみてはどうでしょう」と、クライエントに奨めたところ、溜飲が下がったようで喜んで帰られた。
 
                               東京メンタルヘルス 所長 武藤清栄