性をどう生きるか②~ノンセクシャルを生きる~

2016年08月15日

ある日、私のところに「自分は女性にモテない。これでは人生に暗雲が漂うばかりで、生きがいもない」と訴えるクライエントが来談された。
  
「モテる」とは、よく言われているように、人(異性・同性)から興味関心を持たれ、性的存在として魅力に富んでいることの意である。また性的存在とは、「会いたい」「一緒にいたい」といった愛慕の情や、「触れたい」など身体接触の欲求や期待を持たれる対象を指している。

 

このクライエントは、自分はそういった存在ではなかった、とこれまでを思い返していた。周りから求められてこなかったこと、必要とされてこなかったことが、性を生きる自信を失わせていたことに気づいていった。どうせ自分はモテないという思い込みが、異性に対して働きかける気力を低下させていたようである。

 

「あなたの人生にはどのような性が憑りついているのですか」とさらに投げかけてみると、クライエントは性に関する不快な体験を山ほどあげつらった。性に対して心や身体で反応する能力や、性的な喜びを体験する能力をすっかり抑圧・抑制しあきらめていたのである。言うならば性のうつ病にかかっていたとでもいったところだろうか。

 
逆説に真理ありで「性を無視して生きてみてはどうでしょう」と、クライエントに奨めたところ、溜飲が下がったようで喜んで帰られた。
 
                               東京メンタルヘルス 所長 武藤清栄

メンタルヘルス通信No.72のお知らせ

2016年08月1日

メンタルヘルス通信No.72のお知らせ

 

今号は「心地よさを感じに、自然の中へGO!」と題して
ご紹介しておりますので、参考にしていただければ幸いです。
メンタルヘルス通信は、イントラネットへの掲載やプリントアウト
しての配布など、従業員の皆様へのメンタルヘルス啓発活動などにご活用ください。

 

従業員の皆様に配信される場合は、
本通信に社内相談室の案内などをつけ加えて配信することで、
相談室の利用促進になりますので、お勧めいたします。
 
【PDF版】
メンタルヘルス通信No.72

【テキスト版】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
NO.72 「心地よさを感じに、自然の中へGO!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前号では、「森林なんかでストレス解消できる!?」と題して、
森林がメンタルヘルスにどのような影響を与えているのか、概観しました。
木の香りであるフィトンチッドや、木を触ったときの感触・ぬくもりが
メンタルヘルスにいい影響を与えているということをお伝えしました。

今号では、さらに、どのように自然の中で過ごすとメンタルヘルスに
よいのか、ご紹介したいと思います。

<<心地よさを感じに行こう!>>
森に山に、あるいは海にと自然の中を歩く時には、是非、自分にとっての心
地よさを感じ取れるといいでしょう。なぜかというと、心地よさを感じ取る
こと自体が、すなわち癒しであり、気分転換やストレス解消となるからです。

心地よさを感じているとき、私たちの体は、「生理的にリラックス」し、
「ストレスホルモンは減少」し、「ナチュラルキラー(NK)細胞が活性化」
した状態になっていきます。


1)「感覚」モードへ、スイッチON
心地よさを感じ取るためには、感じ取る「感覚(五感)」を開かなければ
なりません。そのためには、普段の仕事でよく使っている頭の「思考」
モードは軽めにしておきましょう。そして、「感覚」モードへ、スイッチを
入れていきましょう。

2)身体と心から、適度に力を抜く
 感覚を開くためには、身体と心から適度に力が抜けていることが必要です。
身体の力を抜くためには、軽く動かすこと、ハードにではなく、ボチボチと
自然の中を散歩していくとよいでしょう。簡単な体操やストレッチ、
深呼吸などをしてみるのもよいです。

心の力を抜くためには、心を安心させてあげることが必要です。いきなり
初心者が上級者向けの自然の奥地に行って、怖い思いなどしてしまうと、
心に過度に力が入ってしまい、逆効果となります。初心者の方は、
整備された森や森林公園などからはじめる方が、安心できるでしょう。
また、現地をよく知っているガイドや、森林セラピストと同行するのも
安心ですね。

3)好きな場所で、目を閉じてみる
身体と心から適度に力が抜けてくると、私たちの感覚は開きやすくなります。
適度に力が抜けたら、好きな場所を見つけて、軽く目を閉じてみてください。
目を閉じると、普段使わないような「感覚」に私たちの注意が向いていき
ますので、そこでしばらく感じてみてください。そして、例えば、
以下のように自分に聞いてみてください。

 そうやって、感覚を通して、自然を感じてみてください。その後、
目を開き、あなたにとっての心地よさを探しに、感じに、自由に歩いて
みてください。

4)自然と笑みがこぼれる心地よさ
心地よさを感じると言いましたが、それは「空気が違う、気もちイイ」
「このにおい好きだなぁ」「緑がキレイ」「これちょっと怖いけど、
かわいい」「あー、あの鳥カッコイイ、気持ちよさそう」
「わっ、木漏れ日キラキラ、ステキ」「この土、気持ちいい、絨毯みたい」
「風がいいね~」「鳥の鳴き声いいなぁ」「水が冷たい!気持ちいい」

などといった言葉が出てくるようなものであり、自然と笑みがこぼれる
ようなものです。

自然の中には、こういった心地よさを感じさせてくれる快適な刺激が、
まだまだ豊富にあるのです。

5)日常生活にも広げよう!
このようにして自然とふれあって、自然を楽しみ、自然に癒され、
ストレス解消したあと、日常生活に戻ってくると、またストレスに
まみれた生活が待っているのでしょうか?

実は、森林療法の研究では、2泊3日の森林療法体験での効果が
約2か月持続したという研究結果
も出てきています。

また、こういったこともあります。森林療法など、自然の中で心地よい
体験を積むと、それが日常生活にも広がっていくというものです。
道端の緑にこれまで特段の関心を持たなかったのに、自然体験から
帰ってくると、なぜか道端の緑に目が向かうようになります。
そして緑をみると、自然の中での心地よい体験の記憶が蘇り、
ちょっとした癒し効果にもなります。

このようにして、自然の中での心地よい体験は、日常生活へも広げて
いくことができるのです。

東京メンタルヘルス 新行内勝善(森林セラピスト)